03-振り回されてばかり ページ3
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温かい紅茶を淹れて、改めてきちんと座ってダイニングテーブルで向かい合う。
まだ湯気の出ている紅茶を一口含んで、心を落ち着かせる。話はそれからだ。カップをテーブルに置き、「で?」と尋問を開始する。
「その惚れ薬とやらは本物なの?」
「うん。モノホンだよ」
「……そんなものどこで手に入れたの?」
「企業秘密♪」
「…」
「貰ったんだよ、知人から」
「何その怪しい知人」
どうしよう。悟くんの反応を窺って、惚れ薬が本当の話なのか見極めようと思ったけど、……。
全っ然わからん。
ていうか尋問したくらいで悟くんの気持ちがわかるんなら、そもそもこんな関係になってすらいない。私が悟くんのことわかるわけなかった……。
混乱を沈ませるためにもう一度紅茶を飲み、溜息をつく。もう今日は無理だ。仕事で疲れてるし。明日も仕事だし。よし、帰ってもらおう。
私は解きかけの問題を放置することに決めた。
「……そろそろ帰る時間じゃない?今日はもう帰りなよ。また今度話そう」
「え、帰らなきゃダメ?」
「は?」
「泊まらせて♡」
キャピッと語尾にハートを乗せて、ぶりっこしながら言った悟くんを見て、ぞっと背中に寒気が走った。
あー、もう駄目だ。頭痛い……。
オーバーヒートしそうな頭を抑えつつ、本日3度目の溜息を吐く。あぁあ、また幸せが逃げていく。
「帰れ!」
「えー」
「もうこの家出禁にするよ?」
「ははっ、合鍵くれたじゃん忘れちゃったの?」
「……鍵も変える」
「エッ」
流石にそこまではしないが、少し脅せば焦ったようで、唇を尖らせて「わかった、今日は帰るよ」と渋々頷いた。
ハンガーにかけてあったコートを着て、鞄を持ち、驚くほどあっさりと玄関に行く。
ほら、泊まらせてとか言ってた割には、すぐに引いて帰ろうとしちゃう。
気まぐれな猫のような彼に振り回させて何年経ったのだろう。もう数えることも辞めた。
悟くんは扉を開ける。そのまま出て行くのかと思ったが、数秒動きを止めてから「A」と顔だけでこっちを見た。
「____僕に1番聞きたいこと、あるんじゃないの?」
「え……」
1番、聞きたいこと……。
そんなの考えなくても決まっている。
もし、本当にあの惚れ薬が本物なら。
どうして、自分からそれを飲んだの?
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ももか(プロフ) - 自分に引くほど、めっちゃニヤニヤしながら読んでました……最高すぎました!!これからも頑張ってください!!!!!! (2021年2月21日 20時) (レス) id: 962a75c0d9 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - あおいさん» 文章褒められるとめちゃくちゃ嬉しいですー!( ; ; )こちらこそ、お読みくださり本当にありがとうございました!! (2021年2月10日 17時) (レス) id: 4a1d1da0e2 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 語彙力の塊すぎて…素晴らしい作品をありがとうございました! (2021年2月8日 0時) (レス) id: c6e7ce5294 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - #ゆー@金欠民族さん» めっっちゃ面白かったなんて光栄です…(^^) 暖かいコメント嬉しいです!最後までお読みくださりありがとうございました! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 4a1d1da0e2 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 輪廻@サブ垢なのだー!さん» 完結後もお会いできて嬉しいですー!( ; ; )暖かいお言葉を貰えて本当に嬉しかったです…!今次の作品を考えているところです。最後までお読みくださりありがとうございました! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 4a1d1da0e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぅち | 作成日時:2021年1月26日 17時