10-なんで ページ10
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花火が終わり、人混みが流れていく。
船長は振り向くことなく言った。
「……戻るぞ」
今度は彼が、その言葉を。
どこか物足りないような、名残惜しいような感じがするのは、まだ花火の余韻に浸っているせい。
……そういうことにしておこう。
「……はい」
人混みなんか物ともせずどんどん前に進んでいく船長。はぐれないように必死についていくのがやっと。本を大事に抱え、スタイルの良い長身を頼りに歩く。
しかし、前から歩いてきていた子供に気づかず、軽くぶつかってしまった。お母さんと手を繋いでいる彼女に「ご、ごめんね！大丈夫？」と謝り、何とかその場を収める。
そしてふうっと息を吐き、前に視線を戻すと。
「(あれ？)」
目印にしていた背中がいなくなっていた。
咄嗟に辺りを見渡すも、彼の姿はどこにもない。
この数秒間で見失ってしまったようだ。
…
1人になると頭が徐々に冷静になってくる。
まあいいや、後は帰るだけだし、船長も先に船で待ってることだろう。
今更慌てる必要はない。
流れに逆らわず、船を目指してゆっくりと歩き始める。
ついさっきまでは2人で歩いていたのに。今は1人。
私は側にいてもいなくても、船長のことばかり考えてる。
……ねえ、船長。
なんで好きって言ったの？
今まで必死に隠してたじゃん。
私に、好きだってバレないように……
もし次、同じ台詞を聞いてしまったら、私はちゃんと首を横に振れるだろうか。自信が無い、自信が無いよ。
……だって、本当は私も
「おい、ゆっくりしてねェで付いて来い」
「……船長、」
「お前はいつも遅いな」
いつの間にか船長が私の前に立っていた。
突きつけられた文章は乱暴なものだったが、その声色と表情はどこか柔らかかった。
「てきとーに掴まれ。はぐれると面倒い」
「あ、でも本が……」
「一冊持っててやるから」とこの言葉通り、船長は私の腕の中から一冊抜き取る。そして一冊になったので、片手だけで抱えられるようになった。
それでも躊躇していると「早くしろ」と促されたので「失礼します……」と船長のパーカーの裾を軽く掴んだ。
さっきよりも俄然、歩く速度が上がる。
ドキドキして俯くことしかできなかった。
駄目だよ、船長。
だって私は荷物持ちを頼まれたから外に出たのに。
それさえも、奪われてしまったら。
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涼野紫乃(プロフ) - 完結おめでとうございます！作者様のローオチの作品は他にも読ませていただいてますが毎回話の構成、終わり方が最高で泣かされてしまいます。新作も絶対読みます！これからも頑張ってくださいm(_ _)m (2020年8月16日 8時) (
レス) id: 5f142ceaa5 (このIDを非表示/違反報告)
てい。(プロフ) - 完結ご苦労さまです！更新まだかなと楽しみに思えるほどこの小説が好きでした！1番が気になっています、気になりすぎて早く読みたいくらいですが…これからも頑張ってください！応援してます (2019年9月24日 18時) (レス) id: 6af5281e1b (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 皆様ご協力頂きありがとうございました…！一人一人にきちんとお返事したいところですが、有り難いことに多くの方にご意見をもらえて…泣 でもコメントや感想はすべて読ませていただきました！本当に温かいお言葉をもらえて嬉しいです！今後もよろしくお願いします…！ (2019年9月24日 17時) (レス) id: fbe06363c9 (このIDを非表示/違反報告)
ぴろぴろ(プロフ) - 完結お疲れ様です★遅くなりましたが、3番が読んでみたいです(*´∀｀) (2019年9月24日 11時) (レス) id: 5ce8d72b22 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - 2.3どちらも捨てがたいです(ﾟ´ω｀ﾟ)！完結お疲れ様でした！ (2019年9月24日 1時) (レス) id: e1ea64eec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年9月8日 18時
