32-蘇る恋心 ページ32
.
2年の間で、変わったこと。
船長が王下七武海に加入した。
最初は政府の駒になるなんて、と思った。
だが頭の切れる船長のことだ。きっと何か考えがあるに違いない。
それをもう、直接尋ねることはできなくなったけど。
近くにいるのに、何も聞けない。
微妙な距離感が埋まることはなかった。
これでいいんだ、と言い聞かせることで精一杯だった。船長は私への恋心を勘違いだったと認めたんだ。私と父を重ねて見ていただけだったのだと。
私だけが、船長を好きなまま。
そうしてある日、クルーは集められた。
船長は驚くべきことを口にした。
「しばらく別行動をとる」
…
頭が、真っ白になる。
私だけじゃない。
他のクルー達もいきなりのことに唖然としている。
「な、なんでキャプテン！？おれはキャプテンと一緒がいいよ！」
かろうじてベポが反論する。
それでも船長の決意は固く、決して揺らがなかった。
「そろそろ四皇の一人を引きずり降ろそうと思う。作戦通り動くには単独行動の方がやりやすい」
王下七武海には、その為に入った
船長にそこまで言われてしまっては、部下としてはもう何も言えなかった。
すべては彼の計算だった。
いつから作戦は始まっていたのだろう。
そんな計算で埋め尽くされた船長の作戦を否定する発言なんて……できない。
段々とクルーの間に緊張感が募る。
「お前らは先にゾウへ向かえ。おれも後から行くから、ベポのビブルカードを貰っておく」
クルーの緊張なんか御構い無しに、船長はどんどん話を進める。
彼がまだ何かを話しているが、私の耳には届かない。
音が遠のいていく。
船長が、いなくなる。
“後から行くから”って言ったけど本当に？
四皇を引きずり降ろすと言った彼の目には、強い意志が宿っている。それは決意であるようで、違うような。
胸騒ぎが、する。
「____んじゃ、解散」
いつの間にか話は終わっていたようで、クルー達は渋々といった様子で、でも船長が解散と言ったのですぐに散っていく。
私も皆に合わせて慌てて立ち去ろうとする。
……が。
「お前は、こっち」
船長に手を引かれ、耳元で囁かれる。
有無を言わせずそのまま手を引かれて歩き出す。
久し振りに近くで聞いた声、
久し振りに感じた彼の体温、
これらが一気に強い想いを蘇らせて。
どうしようもなく、泣きたくなった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1884人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
涼野紫乃(プロフ) - 完結おめでとうございます！作者様のローオチの作品は他にも読ませていただいてますが毎回話の構成、終わり方が最高で泣かされてしまいます。新作も絶対読みます！これからも頑張ってくださいm(_ _)m (2020年8月16日 8時) (
レス) id: 5f142ceaa5 (このIDを非表示/違反報告)
てい。(プロフ) - 完結ご苦労さまです！更新まだかなと楽しみに思えるほどこの小説が好きでした！1番が気になっています、気になりすぎて早く読みたいくらいですが…これからも頑張ってください！応援してます (2019年9月24日 18時) (レス) id: 6af5281e1b (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 皆様ご協力頂きありがとうございました…！一人一人にきちんとお返事したいところですが、有り難いことに多くの方にご意見をもらえて…泣 でもコメントや感想はすべて読ませていただきました！本当に温かいお言葉をもらえて嬉しいです！今後もよろしくお願いします…！ (2019年9月24日 17時) (レス) id: fbe06363c9 (このIDを非表示/違反報告)
ぴろぴろ(プロフ) - 完結お疲れ様です★遅くなりましたが、3番が読んでみたいです(*´∀｀) (2019年9月24日 11時) (レス) id: 5ce8d72b22 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - 2.3どちらも捨てがたいです(ﾟ´ω｀ﾟ)！完結お疲れ様でした！ (2019年9月24日 1時) (レス) id: e1ea64eec7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年9月8日 18時
