24-恋でした ページ24
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予想通りとでも言うべきか、船長は瞠目し黙り込む。
きっと考えもしなかったのだろう。
ナギナギの実の能力者じゃない、ただの一般人の私なんて。
もはや船長の無言そのものが答えだ。
呆れか諦めか、曖昧な感情から小さく笑みが漏れる。
「……もう答えは出てるはずです」
「…」
「貴方はきっと、ナギナギの実の能力を持たない私になんて、気づきもしなかったでしょうね」
「やめろ!」
もう、いい。
そう言って船長は怒りをあらわにし、強引に私の両肩を掴む。手の力の強さに顔を歪める。
「……やめてくれ、」苦痛に染まった顔で、彼の喉から無理やり絞り出したような声が、至近距離から届く。
船長が自分の気持ちに気づき始めている。
私への幻想の想いに。
近い距離に怯むことなく力強く言う。
「そして、思い出すんですよね?私のこの金髪とこの緩い跳ね具合を見て」
何か言い返そうと口を開きかけ、でも結局言わずに閉じてしまった彼に、トドメを刺すように。
……呪いをかけるように。
胸元に吊るしてあるペンダントを握る。
「私の父である______ロシナンテを」
実の娘の私にはほとんど父の記憶はないというのに、赤の他人の船長にははっきりと記憶があるという。
おれはあの人に救ってもらったんだ、とも言っていた。命の恩人だとも。
それを初めて聞いた時、船長を命懸けで守った、もはや顔も朧げな父を誇りに思った。
そしてすべてが繋がった。
だから船長は私を船に乗せたんだ、と。
船長は父の形見を手元に置いておきたかっただけだったのだ。
それでその所有愛が拗れて、恋だと錯覚してしまっただけ。
私の好きと船長の好きは意味が違う。
肩を掴む強さが徐々に弱まっていく。
今度こそ何も言えなくなった彼。
ここまで言えばもういいだろう。
私はぺこりと頭を下げ「では、失礼します」とその場を立ち去る。
早く早く歩みを刻む足の隣で拳を固く握る。
船長、貴方の気持ちは勘違いだったけど、
私の気持ちは本物です。恋なんです。
枯れたはずの涙が、再び零れる。
……貴方のことが、大好きでした。
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涼野紫乃(プロフ) - 完結おめでとうございます!作者様のローオチの作品は他にも読ませていただいてますが毎回話の構成、終わり方が最高で泣かされてしまいます。新作も絶対読みます!これからも頑張ってくださいm(_ _)m (2020年8月16日 8時) (レス) id: 5f142ceaa5 (このIDを非表示/違反報告)
てい。(プロフ) - 完結ご苦労さまです!更新まだかなと楽しみに思えるほどこの小説が好きでした!1番が気になっています、気になりすぎて早く読みたいくらいですが…これからも頑張ってください!応援してます (2019年9月24日 18時) (レス) id: 6af5281e1b (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 皆様ご協力頂きありがとうございました…!一人一人にきちんとお返事したいところですが、有り難いことに多くの方にご意見をもらえて…泣 でもコメントや感想はすべて読ませていただきました!本当に温かいお言葉をもらえて嬉しいです!今後もよろしくお願いします…! (2019年9月24日 17時) (レス) id: fbe06363c9 (このIDを非表示/違反報告)
ぴろぴろ(プロフ) - 完結お疲れ様です★遅くなりましたが、3番が読んでみたいです(*´∀`) (2019年9月24日 11時) (レス) id: 5ce8d72b22 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - 2.3どちらも捨てがたいです(゚´ω`゚)!完結お疲れ様でした! (2019年9月24日 1時) (レス) id: e1ea64eec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぅち | 作成日時:2019年9月8日 18時