このたくさんの思い出に感謝を届けましょう (ページ30)

今日:2 hit、昨日:11 hit、合計:6,879 hit

そして、最後の炎が消えていったページ30

肩に乗る主の重み。体温。呼吸音。
未だ全て僕の耳に届く。

それが酷く安心する

まだ生きている

君の声を、聴かせて欲しいな。ねぇ、主

ざぁぁっと強い風が吹いていきなりの風に思わず目を瞑ってしまう

光忠｢っ…！もう…せっかくの髪型が崩れてしまうじゃないか…｣

今鏡なんてないから軽く手ぐしで直すにも少し気分が落ちる。後で直しに行かなくちゃ

光忠｢ん…？あ…！主っみて！蕾から花が咲きそうだよ！満開になったら花見でもする？宴が好きな刀が喜びそうだね｣

ひとつの枝に咲く桜の蕾が花を咲かせようとしておりその周りにもピンクの花が咲き始めていた。
これはあと数週間で満開になるだろう。また忙しくなりそうだ。想像をして笑いそうになり主にも同意を求めようと視線を送る

光忠｢ねぇ、主。君は＿＿＿＿＿主………？｣

君は目を閉じたまま動かなかった。
軽いはずだった重みがずっしりと肩に乗ってくるような感覚
僕は口を開こうにも全く開けなかった

謙信｢光忠ー！｣

パタパタと足音と共に笑顔でやってきた謙信景光の後を追うように籠を持った小豆長光が歩いてくる

謙信｢そこでなにやっているんだ？あ。あるじもいっしょなんだな！｣

小豆｢あるじもいるならちょうどいい。いま、はたけでいちごをたくさんしゅうかくできたんだ。これをつかってけーきでもつくろうとおもってね。きみたちもくるかい？｣

小竜｢光忠くんがこんな所でのんびりしてるなんて珍しいー俺も休憩しようかなー？｣

謙信｢光忠？あるじ？どうしたの…？あれ、あるじは…ねてるの？｣

謙信は主の様子に気が付いてすぐ隣にいる光忠に疑問を投げかけるが当の本人は下を向いたまま何も言わない

小竜｢ちょっと光忠くん。どうしたのさー｣

光忠｢っ……！ご、ごめ……｣

空いている肩に手を乗せて顔を覗き込もうとした時口元に手を抑えたまま見えている瞳から涙を零しそこからとめどなく流れていく。こんな姿は1度も見たことがない

小豆｢みつ…た、だ…？｣

光忠｢主は……っ……も、う………｣

そこからの言葉はもう出せなくて身体を震わせながら必死に声を漏らすのを我慢する姿にたくさんの籠に入った苺がドサッと地面へと落ちていく

小竜｢嘘……でしょ……？ねぇ、ある、じ……主……！起きて、起きてよ…！｣

大般若｢……小竜……やめてあげな……｣

主の両肩を掴んでゆさゆさと揺らしても反応をみせない。声をかけても話す事がない。