このたくさんの思い出に感謝を届けましょう (ページ29)

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炎がひとつページ29

｢光忠、私のわがままをいっぱい聞いてくれてありがとう。私の大切な刀の1振。大好きだったよ｣

｢…ああ。僕も、君の事好きだったよ。大切な人だった。君のわがままなんて可愛いもんだったさ。他の子だってそう思っているだろうね｣

｢はは…そう、だといいな。ねぇ、最後のお願い聞いてくれる…？｣

｢なんだい？｣

｢光忠。私の本丸を私の家族をこれからも守っていってほしい｣

｢主の命ならば。これから先も｣

僕の手より小さい主の手をそっと握り微笑むと主も同じ様に返してくれて笑ってくれる。
何気ない事にも心が暖かくなるんだね。ぜんぶ、きみがおしえてくれた

ゆっくりと流れていく大きな雲
この空の景色は僕が初めてここに来た時も今も変わらない。この本丸の過ぎていく時間も日常と同じ
全く変わらないんだ＿＿＿

ねぇ、主。

君の瞳にはちゃんとこの景色が写っているのかな？

もっと、

もっと、君と

話がしたいな。

君の大好きなご飯やデザートを作ってあげるよ。
顕現して初めて包丁を握り、僕の元の主がもてなしたように沢山の料理を振舞ってきた。厨の仲間や主と一緒に料理をした思い出。皆が美味しそうに頬張る姿をみて僕は改めて人に振る舞えるこの料理が好きになったよ。

君の色んな顔をみるのが楽しくて大好きだった。
僕をずっと好きでいてくれて、少し特別に愛してくれた。僕だって同じ様に愛してた

｢光忠……知ってる？人が死んでしまったら、最後まで聴覚は生きているんだって｣

光忠｢そう…なんだ｣

｢うん…だから、話しかけてほしいなぁ…って｣

光忠｢ははは…！大丈夫だよ。君をひとりぼっちになんてさせないさ。寧ろうるさくって寝てらんないよ？｣

｢ははっ。それは勘弁して欲しいかも。でも、寂しい思いはしなくて済むね｣

光忠｢うん。そうだね。主って構ってちゃんだもん｣

｢私そんなに構ってちゃんじゃないよー｣

光忠｢まだそう言えるなら全然元気だね。主、もう休みな？身体冷やしたら大変だから｣

｢うん……分かってるけど、もう少しだけ。光忠、お話がしたいな｣

光忠｢仕方ないなぁ…付き合うよ｣

｢えへへ…ありがとう…光忠｣

主は笑ってた。いつものように。

僕が、みんながいつも見ていた笑顔を浮かべていた。

その顔も全然変わっていない。

だから、僕もいつも通りに話をした。

ずっと過ごしてきた日常の中が君の中では1番いいだろう。そして、それを迎えるのもここが1番だ。

僕は、最後まで笑っているよ