1人と1振でつくりましょう (ページ25)

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『…また出陣か…』

暗い部屋の中。体に傷をつけ薄汚れた包帯を巻いた誰かが呟く

『…もう僕達はいつまで耐えなくてはいけないのですか』

ぽつりと漏れる言葉に答えを求めてはいない。僕らは必要とはされていないから、だから既に答えは決まっている

『大将は俺たち短刀に興味無いからな。折れた所でなんとも思わない』

『……いち兄が悲しむだけですね』

皆が想うのは1番上の兄の存在
会いたかったけど“ここ”では会いたくなかった。
兄は審神者に気に入られ初日でここの悲惨な現状と絶対的な服従の存在に為す術もなく幾度と話し合いを提案するが相手にされず悲しげに笑う姿に心が痛んだ。

大切な者は何度も出陣を命じられ私はこの本丸で待つ。いや、待っているのでは無い。ただ価値を求められるだけ
既に身体中が傷だらけで一瞬だけ笑顔を浮かべたが悲しそうに名前を呼び次に会うのは折れた姿

『…お前たち…！』

『いち兄…どうしたこんな所に来て』

『出陣命令が出たと聞いて…』

『……ごめんなさい。僕たちは限界です』

『っ…！主に、主殿に…なんとかっ』

『無駄だ。手入れで資材なんて使ったか？目的の数を集められないだけで折られる。俺たちなんてどうでもいいんだよ…いち兄や他のお気に入りと違ってな』

諦めたように笑うその顔は何度見たか

『もう行かなくては。少しでもお役に立てなければ行く前に破壊されますから』

私の横を通り過ぎていく弟の腕を掴んでここに閉じ込めてしまいたいと何度願ったか
これ以上大事なものが何も喋らぬ鉄くずに戻りまた初めましてを繰り返す。
最初に笑顔を見せてくれるその顔が絶望に変わるのを見たくないと謝られるのは御免だ。

あやまるのは、おまえたちじゃない。
この光景に慣れてしまう自分が恐ろしく吐き気がする程に気味が悪い

誰でもいい。この悪夢を終わらせてくれ
その願いは今日も闇に消えていく

ここ最近主は演練に向かう際刀装を手渡すようになった。きっかけはよく対戦を行う相手方の女の審神者だろう
彼女の編成は様々な刀でありどの刀も鍛え上げていて強かった。それは弟も同じ。私の所には居ない刀も皆が生き生きとした表情で眩しかった。

｢こんにちは。また会いましたね｣

｢…ああ。アナタね…あら、三日月を連れているの？てっきり居ないと思ってたわ｣

｢あはは。私もそれなりに刀剣を揃えていますので｣

主はこの御方がお嫌いだ。少し不機嫌な顔をしながらも相手の審神者は笑顔を向けて話をしている