レインボープール【2】

真実（2） ページ13

松岡くんと会った一週間後、私は郁弥の試合を見に、とある競泳場に来ていた。

いつもなら遥も出るらしく、どちらの応援をしたら良いものなのか迷ってしまうが、今日は遥がフリーの100、郁弥がコンメのみだ。

心置きなく応援ができる。

そう思ってより一層応援に力を入れていた。

郁弥の試合が始まる。

スタートの合図と共に郁弥はプールへ飛び込む。

その後、バッタ、バック、ブレ、フリーの順番でどんどん泳いでいく。

水に逆らわずに受け入れ、しなやかに泳いでいる郁弥はとても美しく、感極まった気持ちが溢れでてくる。

応援のことなど忘れ、立ち尽くしてしまった。

郁弥は周りとは圧倒的な差をつけ、ゴールした。

水面から顔を上げ、電光掲示板を見上げた郁弥の顔に少しずつ笑顔が浮かんできてとても愛おしい気持ちがこみ上げる。

急いで郁弥のところへ向かう。

あの笑顔に1番に祝福をしたい、そう思って走っていたときだった。

自動販売機の横に松岡くんがいたのだ。

こんなところで会うとは思っていなかったので驚いていると松岡くんもこちらに気づいたのか目線をこちらに向けた。


｢松岡くん...。｣


｢春野...。｣


名前を呼ばれるや否やふわっと爽やかな匂いが身をつつむ。

驚いて目を見開くとそこには松岡くんの胸があった。

そこで私はようやく気づいた。









松岡くんに抱きしめられているのだ、と。

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