一日目(妃) ページ8
「勇くん…?」
誰もいないとも思わせる空気の中一人だけいつもは真っ先に帰る彼がいた。
長身の彼が背を曲げて腕の中に顔を埋めぴくりともしない。
微かに浅く背中を上下しているのがわかるくらい。
私はこの現状を誰にも見られたくなくて辺りを見回すとドアを閉めて静かに近寄った。
「勇くん。妃だよ?どうしの。」
紺色のお洒落なカーディガンにふわふわの猫っ毛腕の隙間から覗く閉じた瞼と揺れる睫毛。
すべてを虜にする彼。
つい手を伸ばして髪を撫でる。
心なしか熱くて期待を込めて聞いてみた。
「……しんどい?」
耳元で尋ねればうっすらと目を開けて私の方を見る。
少し息が浅くて熱い彼はいっそう格好よく、セクシーに見えて思わずドキッとする。
そして彼はゆっくりと立ち上がると私の質問にも答えずにトイレの方に向かう。
これは……吐くのか…
そんな淡い期待を抱くも男子トイレなんか入ると勇くんに引かれてしまうので入れない…。
だが神様は私に微笑んでくれた。
舞台芸術部の男子たちがトイレ休憩に来たのだ。
学校にはまだトイレはいくつかあるが反対側か階段を下りなければいけない。
勇くんにそんな体力はないようで目の前の光景によろよろと壁際に手をつくとそのまましゃがみこんでしまった。
あぁ!!なんて!
なんて素敵な!
私は指を突っ込みたい気持ちを押さえて鞄の中をあさる。
今朝水を買ったコンビニの袋と舞台芸術部は誰でも持っている大きめのタオル
そして水。
今日はどうしてこんなに運がいいんだろうか。
そっと近寄ると勇くんはたまに背中を震わせてえずいている。
「勇くん。大丈夫?気持ち悪い?」
さりげなく嘔吐を誘うように背中を撫でると腕を捕まれてこっちを向く。
「大丈夫だから。構わないで。」
「…でも顔色悪いし…」
「大丈夫。もう帰る。」
意地をはるように言えばそのまますっと立ち上がって乱暴に鞄を持ち、帰る準備をすればさよならと私に向かっていい放った。
やだ。いかないでよ。
そんな気持ちが先走って気づけば咄嗟に手を掴んでいた。
少し驚いた顔をする彼は私が思っていた異常にしんどかったようでふらっとこちらに向かって倒れてくる。
私はなにも出来ずに支えようとするが彼は男子の中でも二番目に高く私は学年で一番小さい、当然抱きついているみたいになって結局一緒に倒れてしまった。
とほぼ同時。
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はすみ(プロフ) - ヒクイドリさん» ひぎゃぁぁありがとうございます笑更新遅いんですが完結するまで書き続けるのでもしよろしければ閲覧お願い致します!もしシチュエーションリクエストあれば受け付けますよー( ´∀`) (2015年2月10日 2時) (レス) id: 478537fc37 (このIDを非表示/違反報告)
ヒクイドリ(プロフ) - うぼああああ可愛い! 勇と妃が可愛すぎます! ここまで嘔吐に萌えれたのは久しぶりです! ありがとうございます!! (2015年2月9日 19時) (携帯から) (レス) id: cdb67d71d9 (このIDを非表示/違反報告)
鹿野修那 - はすみさん» 私の作品も暇があれば見てみて下さい! 鹿野修那で検索お願いします!! (2014年8月21日 17時) (レス) id: 7f2c951f0f (このIDを非表示/違反報告)
はすみ(プロフ) - ありがとうございます!そのお言葉とても嬉しく思います。ゆっくりですがちょこちょこみてやってくださいませ。 (2014年8月21日 1時) (レス) id: 16d1b9499a (このIDを非表示/違反報告)
鹿野修那 - 私、こういうの好きです !!更新頑張って下さい (2014年8月19日 22時) (レス) id: 7f2c951f0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はすみ | 作成日時:2014年7月19日 20時