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「…先輩いい匂いするなあって思って」

「……」

「……」



なんで素直に答えてしまったのか!!これじゃただの変態じゃないか。この無言の時間がとても辛い。
だってちょっと怖かったんだもん!身長190cm近い先輩にあの顔で見下ろされたら、怒ってないって分かってたとしてもやっぱりちょっと怖いよ!



「……そうか」



たっぷり間を置いた後、先輩は小さくつぶやいた。
…あれ?なんだかちょっと嬉しそうだ。私から上着を受け取りながら、先輩は少し照れたように視線をずらした。
とりあえず気分を害していなかったようで安心する。



「先輩変わった石鹸使ってます?あんまり嗅いだことない香りですね」

「ああ、恐らく香水だな」

「香水!?」



思わず食い気味で応えてしまった。
東堂先輩と香水…。絶対に横に並ぶことがないと思っていた言葉の羅列に、私の耳がおかしくなったかなと一瞬疑った。でも、先輩は少し嬉しそうに『この前見つけた新作でな』と、語ってるし、どうやら夢じゃないようだ。

いやいや、ギャップってレベルじゃねーぞ。女子は男子のギャップにときめくとよく聞くが、ギャップがあまりに大きすぎて普通に戸惑いという感情しか湧いてこない。



「今度貸してやろうか」

「遠慮しておきます…」



ご機嫌な東堂先輩に、私はへらへらと愛想笑いを返すしかない。
しばらく金木犀を見たら、先輩を思い出しそうだ。

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作者名:くろひー | 作成日時:2021年8月20日 0時

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