岩融の歌 ページ27
本丸中庭
月夜
今剣が月を眺めている
今剣「♪」
そこに三日月宗近がやってくる
三日月「その歌・・・」
今剣「いわとおしにおしえてもらったんです。」
三日月「ああ、知っている。だが、少し違う」
今剣「ちがいますか？」
三日月「ああ。あの時の岩融の歌は苦悩に満ちていた。大切な者を思う苦悩にな。」
今剣「…ぼくには…ありませんか？」
三日月「苦悩とは少し違うな。遠いところにいる誰かを思う憧憬、思慕…そんなところだ」
今剣「・・？」
三日月「ははは。難しいか」
今剣「はい。でも、なんとなくですが、わかります」
三日月「源義経のことか。」
今剣「…はい」
三日月「会いたいか」
今剣「…どうなんでしょう？」
今剣は俯き
今剣「…あのとき…ぼくは、みなさんにめいわくをかけてしまいました」
三日月「誰も迷惑だとは思っていないさ。」
今剣「ありがとうございます」
今剣は微笑みながら言った。そして月を見上げる
今剣「ときどきおもうんです…もし、あのとき、ぼくがもっとちゃんとしていられたら、よしつねこうのさいごも…きっと…たとえかなしいけつまつがやくそくされているんだとしても…きっと…」
三日月「救い」
今剣「そうです。もっとすくいのあるさいごにしてあげられたんじゃないかって・・・」
沈黙
三日月「今剣、もしまた義経に相まみえることができたら…」
今剣「いいえ」
三日月「？」
今剣「そんなときはこないほうがいいんです。ぼくがまたよしつねこうにおあいするときは、れきしがかえられてしまいそうなときですから。そんなときはこないほうがいいんです。」
三日月「…そうだな」
そこに岩融が現れる
岩融「今剣。」
今剣「あ、いわとおし！」
岩融「もう遅いぞ。そろそろ休め」
今剣「はい！」
今剣は三日月宗近に一礼し、岩融の傍を通って去っていく。
岩融は今剣が去っていくのを見届け、三日月宗近に深々と礼をする。
岩融も去っていった。
三日月宗近は月を眺め…
三日月「三日月…か」
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作者名：ヴォルペ | 作成日時：2023年12月17日 18時
