よくわからない人物 ページ40
千子村正が月を見上げている
そこににっかり青江と桜姫が現れる
村正「…にっかりさんと桜姫さん…いや、酒井忠次さんとまつさんと呼ぶべきでショウか？」
桜姫「お好きにお呼びください。私の役割はもうすぐ終わりですから」
にっかり「ボクも好きに呼んでくれたらいいよ」
村正「…何か用デスか？」
にっかり「…いや何でもないよ？」
村正「…そうデスか」
しばし沈黙の時が流れる
千子村正「脱ぎまショウか？」
にっかり「脱がなくていいよ、今はね」
村正「そうデスか」
また沈黙の時が
村正「何の時間デスか？」
桜姫「何の時間なんでしょう？」
にっかり「徳川に仇なす妖刀…か。本当なのかな。」
村正「そう思っている人が多いのは事実デス…村正と言えば妖刀…一度持たれた印象は…そうそう変わるものではないデスよ」
桜姫「お嫌いですか？徳川家康公のこと」
村正「好きとか嫌いとか…強いて言うなら…」
にっかり・桜姫「「？」」
村正「よくわからない人デス。それから…人気がない」
にっかり・桜姫「「くくっ。確かに/ふふっ。確かに」」
村正「…わかりますか？」
にっかり「織田信長のように苛烈な個性を持つわけでもない」
桜姫「豊臣秀吉公のように民からの人気があるわけでもありません。ですが、結果的に彼が天下泰平の世を築いた。」
にっかり「なぜだろうね？」
村正「・・・」
にっかり「…僕はね…見届けてみようと思うんだ…彼の傍でね。」
村正「…興味はないです」
にっかり「無理もないね。…でも、興味のないことや苦手なことに手を出すのも悪くないよ。僕もまさか自分が子育てをすることになるなんて思ってもみなかったから…これはこれで楽しいよ」
にっかり青江が去っていく
桜姫「私の役目はもう終わりが近づいております。村正様が竹千代様の家臣を担ってくださることを願っていますよ。」
桜姫はそう告げると去っていった。
桜姫は千子村正から離れると、立ち止まる
桜姫「(私は…役に立てるのでしょうか。私がこの時代に来た意味は…)」
桜姫が悩んでいる間にも時は過ぎゆく
石切丸「…天文二十四年、竹千代君は十三歳で元服。後に松平信康と名を改める。永禄二年、長男の信康が誕生する。」
石切丸は筆を止める
石切丸「…」
そして再び書き進める
石切丸「…そして永禄三年五月、今川義元は宿敵織田家を討つため大軍を率い、駿府を出発。世に言う、桶狭間の戦いである。」
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作者名：ヴォルペ | 作成日時：2023年3月21日 18時
