竹千代様の笑顔が好きですよ ページ38
天文二十年、駿府
夕暮れ
竹千代が空を見上げている
その後ろを歩く、にっかり青江と物吉貞宗と桜姫
竹千代「…忠次」
にっかり青江「はい？」
竹千代は空を指し
竹千代「…鳥が群れて飛んでおる」
にっかり青江「あれは・・・雁だと思われます」
竹千代「…雁」
にっかり青江「はい」
竹千代「…あれは…親子であろうか」
にっかり青江「…そう…かもしれませんね」
竹千代は俯く
竹千代「…鳥でさえ親がおるというのに…どうして竹千代にはおらぬのであろう…」
竹千代は空を見上げ
竹千代「…父上」
にっかり青江「…竹千代様」
竹千代「…分かっておる…殺されたのであったな」
にっかり青江「…はい」
竹千代「…」
物吉貞宗と桜姫は空気を変えるように笑顔になって
物吉貞宗・桜姫「「竹千代様」」
竹千代「…なんじゃ？元忠。まつ」
物吉貞宗「こういう時こそ笑顔です！」
竹千代「…笑顔？」
桜姫「ええ。辛いことや悲しいことはたくさんあります。ですが、笑顔をなくしてはなりません。笑っている人のところに幸運は舞い込んでくるのですよ。」
竹千代「笑うと幸運が舞い込んでくるのか？」
物吉貞宗「はい！ボクは竹千代様の笑顔が大好きです！」
桜姫「私も若様の笑顔が大好きですよ」
竹千代は少し考え、不器用な笑顔をする
竹千代「こうか？」
物吉貞宗「はい！素敵な笑顔です！もっともっと笑いましょ！」
竹千代「‥・これならどうだ？」
物吉貞宗「おお？いいですね。ボクも負けませんよ！えっへへ」
竹千代「えっへへ」
二人が笑いあう。
にっかり青江も微笑んでいる
竹千代「不思議じゃ。本当に幸せな気分になってくる。」
物吉貞宗「はい！笑顔が一番です！」
竹千代「…そうじゃな。いかなる時も笑顔を心がけることにしよう」
日が落ち、カラスの鳴き声が聞こえてくる
にっかり青江「竹千代様、そろそろ戻りましょう」
竹千代「うん」
物吉貞宗「お歌を歌って帰りませんか？」
竹千代「…歌？」
物吉貞宗「ええ。こうです。カアカア、ゲコゲコ」
歌いながら去っていく
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作者名：ヴォルペ | 作成日時：2023年3月21日 18時
