病なんか早く治せよ ページ17
慶応四年、江戸、千駄ヶ谷
土方と近藤がいる。そこに療養中の沖田がやってくる
近藤「総司、無理をするな」
沖田「…せっかく来てくれたんですから」
近藤が沖田を支えて座らせる
土方「そうだ、これを渡しておく」
土方は石田散薬を渡す。
近藤「お、石田散薬か」
沖田「…懐かしいですね」
沖田がくすくすと笑いだす
土方「どうした？」
沖田「その恰好…二人とも、まるで侍みたいだ。」
土方「まるでも何も、近藤さんも俺も今や立派な侍だよ」
沖田「ええ」
沖田は空を見上げる
沖田「…今夜は…見えるといいな…」
土方「ん？」
沖田「天狼星」
近藤「…ああ」
土方「ん？」
沖田「近藤さんから教わったんですよ」
土方「俺ぁ聞いてねぇな」
沖田「…新撰組を結成したばかりの頃…壬生の狼って蔑まされて悔しい思いをしていた時…近藤さんが…覚えてます？」
近藤「…ああ」
沖田総司は近藤勇を真似るように
沖田「狼？上等じゃないか！見ろ、総司、あの星を。あの、夜空で一番輝く星は天狼星と言う。俺たちもあの星を見習って闇夜を明るく照らす狼になってやろうじゃないか。」
むせる沖田
土方「おい、無理すんな」
沖田「…悔しいなあ…あんなに頑張ったのに…今は賊軍扱いだなんて」
土方「…まだ負けたわけじゃねえよ」
沖田「…そうですよね」
土方歳三「総司、近藤さんと俺は流山へ向かう。お前も病なんざ早いとこ治しちまってとっとと合流しやがれ。」
沖田「…わかりました」
暫くの沈黙ののち
土方「・・・それじゃあな、総司」
近藤「…また来る」
沖田「…ええ、また来てください」
近藤「…」
近藤は無言で沖田を見つめる
土方「…近藤さん」
近藤「…ああ」
二人が去っていく。
沖田を見守っていた大和守安定と加州清光と桜姫が現れる
沖田「…お二人を侍にすることができた…僕の夢は…叶ったんだ」
沖田が激しくせき込む
それを見ていた加州清光が走り去るようにいなくなり、大和守安定もいなくなる。
桜姫だけが沖田を見つめていた。
桜姫「”悔しいけど…げほっつ…お二人が侍になれて…げほっ…げほっ‥良かった”」
再び共鳴を起こした桜姫
桜姫「彼らのためにも決して歴史を変えさせたりはしない。たとえ、私の体が朽ち果てようと」
かなりの体力を消耗しているにもかかわらず、走ってその場を後にした。
その目に光が宿っていたのか否か…誰も知らない。
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作者名：ヴォルペ | 作成日時：2023年3月21日 18時
