結婚しちゃえ【及川徹】

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「あぁぁぁもう！」


後ろに倒れてベッドに横になる。


『え、なに？』

「ムカつく」



Aの結婚相手、自分、いろんなものにムカついてくる。
どうして俺じゃないの。
どうして俺じゃダメなの。



『よしよし』

「…なにこれ」


Aが俺の頭に手を乗せて撫でていた。
なんなのこれ。


「子ども扱いしてるでしょ」

『だって私よりは子どもだし？』


人の気も知らないで。
…こんなの、イライラ収まるに決まってるじゃん。


「さっさと結婚しちゃえ」

『何その言い方。かわいくなーい』

「可愛いとか思われても嬉しくないし」





結婚しちゃえ。

そしたら、潔く諦めるから。



「……すきだよ」



ボソボソと呟いた本音。
ずっと秘めてた本音。
伝えようとしてた本音。


『ん？なんか言った？』



届くはずも無いのに。





「俺、絶対Aより幸せになるから」

『彼女いないのによく言うね』

「彼女作って、幸せになるから」





だからAも幸せになってよ。


幸せにならないと、俺が諦められない。





『じゃあ、徹の結婚式出席しないとね』

「そうだね」

『あ、結婚式で思い出した！』





ほんとは俺が幸せにしてあげたかったんだけど



『式なんだけどね、徹にも来て欲しくて。日程が ─── 』



それは俺じゃなかったみたい。


Aの左手の薬指で光る指輪を見て、俺は握りこぶしを作った。

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