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なんでこんな田舎に来たの?とか、学校楽しい?とか、そんな話をしても重岡くんはテキトーな返事しかしなかった。
でも不思議と、嫌な気分はしなかった。
むしろ、重岡くんが隣にいるだけで自然と心が落ち着いた。
「あっ」
私たちが出逢った、金木犀のある公園。
「早く咲かないかなぁ」
『なんで好きなん?』
「なんか、自然と心が落ち着くんだよね。花の香りも。だから季節は秋が一番好き」
「あと、あんなに大きな木見てたら、自分の悩みなんてちっぽけだなって思える」
「重岡くんは?なんで昨日あそこにいたの?」
暫く黙ってから
『涼しいもんな、あそこの場所』
って。
「…そういうこと!?(笑)」
『暑いの苦手やもん』
「クーラーつければいいじゃん!」
『クーラーやと冷えるし』
面白いことも言うもんだ。
なんだか、予想外の返答がやけにおかしくて笑いが止まらなかった。
『何がそんなにおかしいねん(笑)』
あ、苦笑いもなかなか好き。
*
重岡くんと過ごす時間はあっという間で
気づいたら家の前まで来ていた。
「あ、じゃあ私ここだから」
なんだか名残惜しいなぁ
『…しげ、でええよ』
「え?」
思わず固まって、じゃーなーと言って片手を挙げる彼を黙って見つめることしかできなかった。
今なんて…?
しげ、って?
呼んでいいよ、ってこと?
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作者名:さな | 作成日時:2017年9月24日 18時