かくしごと ③ ーKEIー (ページ15)

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いつの間にか定位置になっていたAの横に腰掛ける

自然と体を寄せ合い、
お互いの体温をかみしめるように隙間なく抱きしめあう

『落ち着く…』

「同じ学校なのに全然会えてなかったもんね

最近来てくれないから心配したよ」

『文化祭が終わってひと段落つく頃までこの状態が続くかも』

Aは決して寂しいとか言わない

俺に対しての気遣いなのは重々承知してる

『こんな時間まで何してるの

とっくに閉館時間過ぎてるけど…』

「私も文化祭に向けての仕事が忙しくて」

文化祭の仕事！？

図書室って文化祭なんか出してたっけ…

「慧さんなにも知らないの！？ひどいっ」

『いや、自分の仕事しか把握してなくてさぁ』

「今年から古本屋をすることになったの

図書室でもう汚くなっちゃった本とか、新しい本を入れるためにシリーズでまとめて売ったり」

『今年からってことはAの案？』

「うん。本に少しでも親しみをもってもらいたくてさ

図書委員さんに協力してもらってだけど、挑戦してみようと思って」

パソコンを覗くと、

なにやらデータ化された数値がずらーっと並んでいた

さっきまで計算ばかりしていたからか、数字を見るだけでクラっとくる

「最近読まれてるのはどんな本か、どんな人が、どの頻度でとか全部わかるの

だからこれで古本屋で売る本を選定してる最中」

『へぇ～

漫画とかたくさん借りられてるね』

「最新刊入れたいんだけど本棚のスペースが限られてるから

　入れ替えしなきゃいけないんだよ」

なんか商売みたいだな

一見大変そうに見えるけど、図書室のことを考えるAは楽しそうで

その可愛い横顔に

優しくキスをした

驚いてるAを横目に時計を見ると、

図書室に来てからもうすでに30分が過ぎようとしていた

あっという間だったな…

もう戻らなきゃ

『やっぱりほっぺだけじゃ足りない』

恥ずかしそうに顔をそらす頬に手を添え、

ぎゅっと力が入っている唇に自身のを重ねる

力が抜けてから

何度も何度も名残惜しさを払うようにキスをする

『はぁ、はぁ、これぐらいにしとくわ』

身体がまだ熱いまま

図書室を後にした

「ずるいよ……慧さん… 」