歪んだ十字架３ (ページ29)

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辰哉side

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不安そうな俺の顔を察してか、にっこり笑う大野先生。

　

大野「今までの愛情を取り戻そうとしたい気持ちは分かります。でもね、いきなり色んなことをしても心がびっくりしちゃうんですよね。」

　

その言葉にギクッとする。

俺の「早くなんとか解決したい」、「元の家族に戻りたい」っていう焦る気持ちを

まるで代弁してくれるかのようだった。

穏やかな口調で話を続ける。

　

　

大野「心の病気はすぐに良くなることはありません。時間をかけて、ゆっくり治して行きましょう。」

辰哉「はい・・・。」

　

大野「ちょっと見てもらっても良いですか？」

辰哉「・・・？」

そう言って透明のコップを取り出した大野先生。

そこにペットボトルで水をそそぐ。

　

大野「このコップ、ラウールさんの心だと思ってください。」

　

コップにどんどん水を注ぎ、

　

ついには表面張力で溢れそうなほどに。

少し振動を与えたらこぼれてしまいそう。

　

辰哉「あっ・・・」

それでも大野さんは水を注ぎ続けた。

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