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ラウールside
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ラウ「・・・・・・。」
人ってあまりにも衝撃を受けると、言葉も感情も出てこなくなる。
ただただ、無。
鼓動だけが早く動く。
誰もいないリビング。
放心状態の僕はそこからしばらく立ち上がることができなかった。
いつか家族みんなで仲良く、昔みたいになれればいいな・・・
なんて、そんなのんきなことを思った僕が馬鹿だった。
きっとそんなことはもうない。
あの事故があった日から、
変形させてしまった家族。
どんなに戻そうとしたって、
表面だけ戻したって、
きっと僕が生きている限り、照にいと翔にいは辛い思いをがしなければいけない。
母さんだってきっとそう。
そう考えたら、もう限界だった。
何もかも。
お兄ちゃんも辛いんだ。
僕がいることで、負の感情を持ち続けないといけない。
恨みたくないのに恨み続けなきゃいけない。
僕に優しくしてくれるお兄ちゃんたちももしかしたら、
心の中では負の感情を押し殺しているのかもしれない。
僕の存在が家族を苦しめている。
歪ませている。
分かっていた。
分かっていたはずだった。
そうだよね。
こうしなきゃいけなかったって。
始めから分かっていた。
もう、
迷いはなかった。
・
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作者名:ゆり | 作成日時:2022年9月1日 0時