喪失 "弟side" ページ32
あの暑い夏の日に姉ちゃんは消えた。
俺はあの後すぐに家に帰って見たままのことを父さんとじいちゃんに言った。混乱したまま、まくしたてるように喋ったからか｢とりあえず落ち着け｣と言われ、｢寝ぼけて夢でも見てたんじゃないか？Aならすぐ帰ってくるだろう｣と笑われた。
違う。夢なんかじゃない。
本当に姉ちゃんは消えたんだ。
なんでわかってくれない。
日が暮れてきても帰ってくる様子は無く、じいちゃんも流石に心配になってきたのか畑仕事を早々と終えて門の前でずっと帰りを待っていた。
そして夜になって遂にみんなで探しに外へ出た。各々名前を呼んで叫ぶが返事は返ってこない。
ばあちゃんの木の前でじいちゃんは泣きそうになりながら｢どこへ連れていっちまったんだい、ばあさんよぉ｣と呟いていたのを俺は聞き逃さなかった。
ばあちゃんは、昔から所謂"霊感"というものがとても強い人だったらしい。ここら辺では有名で遠くからばあちゃんに見てもらいに来る人も居たりしたようだ。そんなばあちゃんの木だ、なにかしら力があってもおかしくねぇよな。
その後警察に連絡して捜索願を出して探してもらったけど、それでも姉ちゃんは出てこなかった。
父さんなんて気苦労でだいぶ痩せて白髪が増えたし、じいちゃんはじいちゃんで、毎日ばあちゃんの木に拝みに行ってるらしい。
「どこ行っちゃったんだよ、、」
俺は俺で探している。姉ちゃんが消える一瞬に見えた、姉ちゃんを連れていった男の姿を。
美形、の種類に入るだろう。
藍色の髪に赤と青のオッドアイ。
きっと姉ちゃんへと繋がる手がかりになるはず。
「絶対 諦めない」
消えた夏の日から時間は経ち、秋になった。
冬になって、春が来てまた夏が来ても俺は絶対に姉ちゃんを探し出してやる。
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作者名：もんち | 作成日時：2016年9月11日 13時
