好き ページ29
久しぶりの応接室に感動して泣きそうになりながら雲雀さんをソファへと座らせる。とりあえず応急処置でもしといた方がいいのでは、と思い雲雀さんに聞くと｢好きにすれば｣とお答えをいただけたので遠慮なくさせてもらうことにした。
『、、だいぶ暴れましたね』
思いのほか深い傷に心が痛みながら処置をしていく。その間、思いのほか大人しくじっとしていてくれたので不思議に思い顔を上げると目が合った。
とくん、と心が鳴る音が聞こえる。
雲雀さんはゆっくりと私の頬に手を当てると、すっと親指で頬を撫でた。ピリｯとした痛みに驚いて目を見開くと｢切れているよ、気づいてなかったでしょ？｣と言われ雲雀さんの指を見ると血が付いていた。
『いつのまに、、』
「僕のことより自分の心配をしなよ」
『！あ、ありがとうございます、、』
傷が痛まないよう優しく貼られた絆創膏を撫でる。全然気づかなかった。殺されないよう動くのに必死で小さな傷なんて気にもしてなかったな。
『リング争奪戦、お疲れ様です』
「気に入らない奴がいたから咬み殺しただけだよ」
ふん、と鼻を鳴らしてそっぽ向く雲雀さんに懐かしさを覚えた。まるで昔に戻ったようだ。
今、言うべきなのだろうか。
雲雀さんを見ていると、何、とでも言うかのように訝しげに見つめ返してきた。
『ひ、雲雀さん』
「、、何」
『私、雲雀さんに追い出された理由考えたんです』
『けど、本当の答えなんて分かりませんでした。本当の気持ちは雲雀さんにしか分かりませんから』
「へえ」
『なので自分に出来ることをしました。強くなって、、、雲雀さん位にとは言えないけれど強くなって、堂々と胸を張って傍に立てるように』
「、、うん」
『周りのみんなのおかげで少しは強くなることができました。まだ幻覚は苦手ですけど、、けど耐性も少しずつ付いてきたんです！』
「樹」
『、はい』
「もういいよ」
『え、、？』
「君はどうしたい？」
『わ、私は、、』
『ずっと、雲雀さんの傍に居たいです！！私、雲雀さんのことが、、わっ』
「黙って」
もうこのまま想いを伝えようと覚悟して言っていると急に雲雀さんが私の腕を引っ張り、気がつけば雲雀さんの腕の中にいた。
こ、これは、何が起きているの？
「好きだ」
『は、はい？』
「、、1回で聞きなよ」
『えっ、えっと』
「僕も樹が好きだよ。」
『え、え、えええ？！』
「ちょっと。耳元で煩い」
****
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もんち | 作成日時：2016年9月11日 13時
