会いたい "雲雀side" ページ28
「あの人、、ずっと骸様が話しかけてた、！」
「や、奴は」
「取り違えるなよボンゴレ、オレはおまえを助けにきたのではない。礼を言いにきた」
「ランチアさん！！」
ランチア？知らない、誰それ。
いきなり現れた男は傍らに樹を連れて助っ人として沢田綱吉を助けに来たらしい。
昨日、久しぶりに樹に偶然会ったが確かにどこか変わっていた。どこが、と問われたら答えようがないが、以前のような弱々しさは無くなった。
よく見ると彼女の頬は微かに切れていて血が流れていた。きっと彼女は傷を負ったなんて気づいてもいないんだろう。
あの忌々しい六道骸との時だってそうだ。
弱いくせに僕を庇って消えない傷を負って。
誰かに守られるということは弱いということ。プライドも傷付いたが一番は大切な人を守りきれなかった自分の弱さに腹が立った。病室で眠っている彼女の姿を見て初めて苦い気持ちを感じ、もう二度と彼女のこんな姿は見たくないと思った。
そして、僕は彼女を突き放した。
赤ん坊が、｢ボンゴレに欲しい｣と言ってきたときは｢樹は誰にも渡さない｣と言おうと思った。
だが、果たして今の自分に樹を守りきることが出来るのだろうか。と考えると、一旦赤ん坊に預けて自分の身は自分で守れるように、自分の側に居ても傷つかないようになってもらう方がいいのではという考えに落ち着き、"樹をボンゴレに渡す代わりに強くして欲しい"という約束の元、風紀委員会から退会させた。
そして、彼女は変わった。
初めこそはかなり弱っていたらしいが、めきめきと力をつけだしたらしい。指導者がいいのか彼女に元から才があったのか。なんなのかは知らないが昨日軽く仕掛けた時の動きを見る限り成長したと思う。
力の入らない体を引き摺るようにして応接室へと向かう。
彼女はまだ僕の側に居たいと思ってくれているだろうか。
今、僕のことをどう思っているのだろうか。
体が弱っているからか柄にもなく女々しいことを考えていたら遂に躓いてしまい転びそうになった。受身を取ろうにも力が入らない。地面に倒れる衝撃に構えていたが、不意に体が止まった。
顔を上げると会いたい、なんて思っていた彼女が居るのだ。驚きに目を開くと彼女が口を開いた。
誰か分かるか、なんて分かるに決まってる。
僕を馬鹿にしてるの？
強くなりましたよ、なんて、見れば分かるよ。
久しぶりに側に感じる彼女に気持ちがふわり、と和らいだ。
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作者名：もんち | 作成日時：2016年9月11日 13時
