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えーん、えーんと幼い子の泣き声が聞こえる。
どこで、泣いているのだろう。
どうして、泣いているのだろう。
なぜかその子を慰めなければいけないような気がして、声の主を探すため必死に辺りを見回した。
なのに見つからない。
先ほどまでいた世界がまるで元から存在していなかったと錯覚してしまうほど一面真っ白で、幼い子どころか、景色すらも見当たらない。
声だけが響いている。
次第に焦り始めていた、その時。
「どうされましたか?」
低いテノールの耳障りのいい声が背後から聞こえる。
驚き振り向くと、そこには懐かしい、そしてもう既にいるはずのない篝の姿があった。
貴(あ・・・)
声をかけたいのに、喉が蓋をしてしまっているように声が出ない。
篝はゆっくりとこちらへ向かって歩き、やがて私の前で立ち止まる・
貴(あれ・・・?篝はこんなに身長が高かったか・・・?)
傍にいると、余計明確になった身長差のせいで、見上げるような形になる。
篝はしゃがむと、私に視線を合わせて優しく微笑んだ。
篝「よしよし、そのようにたくさん泣いてしまっては可愛らしいお顔が台無しですよ?」
そっと抱き寄せられ、なだめるように頭を撫でられる。
ひっく、と自分の喉が引き攣れる音がした。
貴(ああ、そうか・・・。泣いていたのは、私だったのか・・・)
貴(温かい・・。そうか、私はずっと、こうされたかったのだな)
篝「よく頑張りましたね。ずっと、この世界にいればもう頑張らなくていいんですよ。俺がいます。ずっと、2人でこうしていましょう」
貴「!!」
その言葉でハッと我に帰る。
抱きしめている体をぐいっと押しのける。
体はもう、小さくはなかった。
貴「そなた、何者だ?」
篝「なぜそんなことを?貴女にお仕えする篝でございますよ?」
貴「嘘だ。篝は優しい男であったが、決してそんな甘言を口にする男ではない。・・・それに、彼はもう死んだのだ!」
そう告げて、きっと睨むと目の前の男はクスクスと笑みをこぼした。
篝「何をおっしゃいます」
そういって再び近寄ってくる。
逃げようとすると、足が何かに掴まれて身動き一つできない。
下を見ると、あの日死んでしまったものたちが行かせまいと血眼の形相で私の足をつかんでいた。
貴「ひっ!」
篝「・・・俺を、俺たちを死なせたのは、貴女様ではございませんか?そうだろう、月輪姫」
彼は嘲笑いながらゆっくりと私の首に手を伸ばした。
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作者名:おふ豚 | 作成日時:2019年4月8日 12時