◇ ページ31
病院のような場所でずっと眠ったままのようなその男の子。いや男の子とは言ったがAとそこまで歳の差は無いかもしれない。正確には青年……だろうか。だがどこかあどけなくて、子供っぽかったのだ。
母親が泣いている。このままずっと起きなかったらどうしようと。言いたい事がたくさんあったのに、はやく目を覚まして欲しいと。
男の子は眠ったままだった。どこか、それでいいように。
「言いたいことは早めに言っとけという教訓だな？」
「ほんとにね……」
少し茶化したようにそうニュースを見て呟くジャックに、Aはどこか歯切れ悪く答える。このテレビに映る母親に何か影を感じたからだ。この人が悪い人っぽいという訳では無い。だが、嫌な記憶を持つ自身の親と重なって、そう見えるのだとAは思った。
テレビに映るその子は、もご、と口を動かした。まるで死んでるようにさえ見えた彼の口が動いていると何だか不思議な感じがすると思いながら、Aはその様子を何気なく見ていた。
「……き、んぐ」
ばち、とジャックとAの時間が止まる。え。今この子なんて……？ きんぐ、それってキングのことではないのか？ 今の聞いたかと言わんばかりにAがジャックを見る。彼も、同じようにテレビに食い付いていた。
ああ、この子はチェスが好きだったんです。と母親が思い出したように言った。チェス。ならばキングはチェスの駒の名前だ。なんだ……そう言うことか……と無理に納得しようとしたが、やはり不自然だなとAはテレビを観る。
そんなことを考えていると、ニュースが次の話題へと変わった。ジャックもなんとも言えない顔をしたまま。──ちょうどその時だろうか、珍しくA家のインターホンが鳴ったのは。
「うわ、誰かきた」
そう言いながら入口の方に座ってたジャックをぐいっと押しのけて(跨ぐにしてもジャックは大きすぎる)はーいと玄関へ向かった。
鎖もせずに、どころか外の人間が誰かも確認せず、勢いよく扉を開けたAを見てジャックは「心底不用心だな」と出会って間もない頃と同じ反応した。そして直ぐに別に彼女に限ったことでもないか、と街の住人の反応を思い出す。
「わーーー！！ う、うそ！！」
またわあわあとうるせえ女だなとジャックがそちらを気だるげに確認する。Aの前には、Aよりほんの少しだけ小柄な女性が立っていた。
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まっさ(プロフ) - 貴方様の小説でどんどんマイナーにハマってしまいます。ディアマンテのも最高でした。供給が少ないのは悲しいですが、少しずつ増えていくことを願っております。 (2020年11月9日 17時) (
レス) id: f7179f55a7 (このIDを非表示/違反報告)
びぃ(プロフ) - まっささん» わわわ……！このような偏狭の作品までようこそお越しくださいました。そして閲覧ありがとうございます！今までにない誰かの、ありそうで無かった世界のお話をこれからも是非のんびり楽しんで貰えたらと思います！！ (2020年11月9日 17時) (レス) id: 1463c1385c (このIDを非表示/違反報告)
まっさ(プロフ) - 珍しいと思い開いてみたら、これはやばい。ハマりました。更新を楽しみにしております。 (2020年11月9日 17時) (レス) id: f7179f55a7 (このIDを非表示/違反報告)
OSO(プロフ) - びぃさん» はるか前から愛してますっっっっ！！！！！！ (2020年10月22日 23時) (レス) id: 4e9a925863 (このIDを非表示/違反報告)
びぃ(プロフ) - OSOさん» コメントありがとうございます、実は私もはるか昔から貴方が好きでした…… (2020年10月22日 23時) (レス) id: 1463c1385c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：びぃ | 作成日時：2020年10月21日 13時
