【オリジナル】君は夢の中で僕を殴った。

03：スマホと漫画 ページ3

好きな漫画の話をした。僕は色んな作品の、色んな本を、アニメを、音楽を愛する。心はどんよりしていても彼らはけっして色褪せないのだ。最新情報はなんでもスマホに入ってくる。

　そんな僕だが、君がいる時はスマホを絶対バッグの奥にしまっている。10人中9人がきっと僕をスマホ依存症と指さすだろう。なにより──僕もそう思う。スマホが無いと不安でたまらないし、意味もなくツイッターの画面を見なきゃ落ち着かなかった。更新されないタイムラインを上にずっとしゅぽしゅぽしたかった。LINEはだめだ、知り合いが君しかいない。

　だから、君がいる時は絶対スマホを触らないようにバッグの奥に押し込むのだ。君といる時は、絶対スマホを見ないと決めていた。むろん緊急時は別だが、近くにあるとついつい触ってしまう。

　だから君がいる時は、僕は画面以外を見ている。広い空とか緑の森とか、いつの間にか建て変わってる店とか。
　だけどやっぱり、どれもそこまで記憶に残らなくて。色濃く残るそれは。

「それ、流行りのアニメでしょ？ 私も気になってた！」

　眩しいばかりの君の笑顔だった。
　眩しいなんて小説的な表現だけど、本当に、本当に眩しいのだ。人はこんなに輝くのかと不安にさえなった。

「良かったら漫画貸すよ」
「漫画もあるの？」
「漫画が最初なんだよ、あれ。そこからアニメ化した」

　──記憶の中はあんなに明るいのに。
僕は今、暗い部屋でスマホを見ている。他にやることがない。代わり映えのないソレだ。

「A、いつ貸した漫画返しに来るかな」

　そう思えば、明日にでもやって来そうだと。
　そう観測する。

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