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乃木「彼女も、男は嫌だろう。上に報告するために黒須と席を外すから側にいてやってくれ」
『勿論です』
部屋の隅での小声での会話が耳に届く。乃木課長は、黒須と呼ばれた男と共に向こう側の部屋へと消えていった。しんと静まりかえった部屋で水羽という女とテーブル越しに向かい合った。
簡素な家具が備え付けられた部屋。彼女は先程、この部屋をダミー部屋と呼んだ。まさかあの棚の奥に穴が空いているとは。公安が気付けなかったのも納得だ。
太田ちゃん、と呼びかけられて目の前の彼女に向き直る。
『何がいい?コーヒー?それともお茶?』
太田「あ、何でも構いません」
間もなくしてキッチンから二つの湯呑みを手に戻ってきた。コト、と私の前に湯気がもくもくと立つ湯呑みが置かれた。
『頑張ってくれてありがとう。太田ちゃんが国を救う力になったよ』
太田「いえ……ていうか、その呼び方やめてくれません?馴れ馴れしい」
『あ、そう?ごめんね』
困り眉をしながら謝る姿を見てこちらが面食らう。
太田「構わないんですが、慣れなくて」
『そうだよね』
太田「貴方の名前は?水羽、なにっていうんですか?」
『ご挨拶遅れました。水羽Aです』
太田「ふぅん…じゃあAさんでいいですか」
俯いていた彼女がパッと顔を上げた。優しい微笑みを浮かべていて、この人が国防の最前線なのかと疑いたくなるほど。薄暗い部屋だからそこまで顔をちゃんと見てなかったけど、こうして明るい中で見ると恐ろしく顔が綺麗だ。美人の定義ってこうだよなと思った。
太田「貴方はあの時、私を抑える手を緩めた。何故?」
『そうだっけ』
太田「とぼけないで。貴方には私の痛みが分からないでしょって言ったら、Aさん、毒気を抜かれたようになってましたけど。…貴方には私の痛みが分かるんですか」
『流石は丸菱のエリートね。勘が鋭い』
太田「過去に何が」
『今傷ついている貴方にこれ以上何か負わせる義理はない。私の過去は私だけが知ってれば充分なの。』
太田「でも、山本を消してくれた恩があります」
『それは乃木さんにどうぞ』
太田「どうしてそんな頑なに拒むんですか、私はただAさんの力になりたい」
『その気持ちだけ有り難く受け取っておくね。それからもう沢山役立って貰ってるから大丈夫』
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rui - 所々ある黒須さんとの絡みが読んでいて楽しめました。このあとの2人の関係や水羽さんの過去など、展開が気になります。更新、楽しみに待ってます。 (10月15日 1時) (レス) @page19 id: 3a7fda0428 (このIDを非表示/違反報告)
緑茶 - VIVANTの小説は少ないのでとても楽しく読ませて頂きました!同じく7話が衝撃すぎてどうなるか全く想像出来ないので最終回が終わるまで楽しみに待っています!頑張って下さい🥹 (8月28日 21時) (レス) id: 9f4c88a27d (このIDを非表示/違反報告)
おひな(プロフ) - 7話衝撃的でしたよね!最終回まで続き楽しみだけど我慢して待っときます...😢 (8月28日 4時) (レス) @page19 id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
かい - めっちゃ面白いです! (8月28日 0時) (レス) @page18 id: 2262061eb9 (このIDを非表示/違反報告)
月海(プロフ) - ( 'ω')そうですよね...意外すぎる展開、、、最終回あとの楽しみが出来ました!!頑張ってください!待ってます (8月27日 23時) (レス) @page19 id: 25a0c09626 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉莉花 | 作成日時:2023年8月15日 23時