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太田「入った。取り込みます。」
サーバーのデータを取り込む作業をして、彼女が席を立とうとする。目の動き、タイミングを伺うような表情、夜中の質問。彼女の意図が分かった。そして今彼女がしようとしていることも分かる。
黒須は画面のパスワードという表示に気を取られている。彼女がナイフを手に取った瞬間、間一髪でその手首を捕えた。
太田「離して!」
『黒須、メールを』
黒須「了解」
彼女がナイフを掴む力がなかなかに強い。喉元に当てたまま、私がなんとか手首を掴んで制止している状態。無理やり奪うとかえって彼女に怪我を負わせかねない。
私より少し身長の低い彼女を見下ろす。
太田「離して!貴方に何がわかるの!私の痛みなんて分からないでしょ!」
『痛み…、』
彼女の一言でふっと緩んだ隙に突き飛ばされた。
黒須「おい…!」
太田「近づかないで!」
黒須が近づこうとすると、脅すようにナイフの刃をこちらに向ける。喉元にナイフを当てたまま、キャスター付きの椅子に腰掛けた。
『太田さん、あのね、』
太田「うるさい!うるさい!うるさい!」
どう声を掛けようか迷いながら一歩近づくと、黒須の腕によって阻まれた。
奥の方でガチャっと音がした。間もなくして乃木さんが現れた。
太田「やっぱり。山本と親友だったもんね。何が国防よ。わかってるのよ。どうせデータを渡したら散々犯して殺すんでしょ!山本が私にやったみたいに!」
喉からひゅっと音が出た気がした。思わず一歩下がると、「あんたもグルなんでしょ!」と叫ばれた。
過去の記憶が一気にフラッシュバックして、立ちくらみを起こしそうだった。彼女が、目の前の彼女が、どんなに辛かっただろうか。私が一番分かっているはずで。何か言わなきゃと思うのに頭が上手く回らない。
太田「だったらその前に死んでやる。私が死ねばデータは絶対開けない。仕込んだパスワードは富嶽でもそう簡単には解けないわよ。証明して。あんたらが山本の仲間じゃないって!本当に国防のためにやってるって!さあ!早く!言わなきゃ死ぬわよ!」
乃木さんが太田さんの腕を掴む。彼女の緊迫した呼吸につられて、私まで苦しさを覚えた。
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rui - 所々ある黒須さんとの絡みが読んでいて楽しめました。このあとの2人の関係や水羽さんの過去など、展開が気になります。更新、楽しみに待ってます。 (10月15日 1時) (レス) @page19 id: 3a7fda0428 (このIDを非表示/違反報告)
緑茶 - VIVANTの小説は少ないのでとても楽しく読ませて頂きました!同じく7話が衝撃すぎてどうなるか全く想像出来ないので最終回が終わるまで楽しみに待っています!頑張って下さい🥹 (8月28日 21時) (レス) id: 9f4c88a27d (このIDを非表示/違反報告)
おひな(プロフ) - 7話衝撃的でしたよね!最終回まで続き楽しみだけど我慢して待っときます...😢 (8月28日 4時) (レス) @page19 id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
かい - めっちゃ面白いです! (8月28日 0時) (レス) @page18 id: 2262061eb9 (このIDを非表示/違反報告)
月海(プロフ) - ( 'ω')そうですよね...意外すぎる展開、、、最終回あとの楽しみが出来ました!!頑張ってください!待ってます (8月27日 23時) (レス) @page19 id: 25a0c09626 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉莉花 | 作成日時:2023年8月15日 23時