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黒須「なんで親子ほど離れた長野専務と?いざというとき守ってもらうためか?」
太田「最初はそうだったんですけどね」
黒須「良い人だったんだな」
仮眠から覚めると、何やら二人の話し声が聞こえてきた。キッチンの方に目をやると、黒須がリンゴを剥いている。
リンゴ剥くんだ。てか、剥けるんだ。知らなかった。
太田「起きてたんですか」
『今ちょうど』
その瞬間、彼女の視線がキッチンの方に向いたのを見逃さなかった。視線を辿る。…ナイフだ。黒須がリンゴの皮を剥いて、粗雑に置いたペティナイフ。
彼女の横顔を眺めながら、必死に思考を巡らす。何を考えているのか。あれを使ってどうしようというのか。私たちを殺す?違う。なにかあるはず。脅しのため?いやそれをして彼女にメリットがあるとも思えない。報酬はたんまりと用意されている。じゃあなんだ。
………頭を過ぎったその理由に、どうすることも出来なかった。
黒須「水羽、起きたか」
『お疲れ。仮眠交代』
有効時間が限られているため、寝かせてあげられない太田さんにごめんねと心の中で呟く。
黒須「ん、」
『なに。ああ…ありがとう』
見上げると、黒須がリンゴの乗った皿を差し出していた。一つ貰って口に放り込む。息が詰まるほど張り詰めた空気に不釣り合いなほど、爽やかな味がした。
黒須が隣にドサッと座る。「インストール完了したら起こしてくれ」と言って目を閉じた。
太田「国防、とは?」
『文字通り国を守る』
太田「具体的には?」
『知らない方がいい』
太田「…何で貴方は国防に関わってるんですか。愛国心ですか」
『…愛する人を守りたい、失いたくないからかな』
太田「愛する人、」
『太田さんは?何のためにハッキングを?』
太田「幼い頃から親の影響でコンピューターに触れる機会が多くて、いつしか」
『なるほどね』
太田「貴方の愛する人って……いえ、何でもないです」
キーボードを叩く音がやけに響く。静かな話し声に耳が反応して、うっすらと目を開けた。水羽に幾つか質問を投げかけていた太田は、既に興味をなくしたようにコンピューターと向き合っている。
暗い部屋で機器の光に照らされた水羽の表情が、鮮明に見える。こんなにも一緒にいるのに、時折何を考えているのか分からなくなる。水羽がこちらを向く前にまた目を閉じて、微睡んだ。
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rui - 所々ある黒須さんとの絡みが読んでいて楽しめました。このあとの2人の関係や水羽さんの過去など、展開が気になります。更新、楽しみに待ってます。 (10月15日 1時) (レス) @page19 id: 3a7fda0428 (このIDを非表示/違反報告)
緑茶 - VIVANTの小説は少ないのでとても楽しく読ませて頂きました!同じく7話が衝撃すぎてどうなるか全く想像出来ないので最終回が終わるまで楽しみに待っています!頑張って下さい🥹 (8月28日 21時) (レス) id: 9f4c88a27d (このIDを非表示/違反報告)
おひな(プロフ) - 7話衝撃的でしたよね!最終回まで続き楽しみだけど我慢して待っときます...😢 (8月28日 4時) (レス) @page19 id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
かい - めっちゃ面白いです! (8月28日 0時) (レス) @page18 id: 2262061eb9 (このIDを非表示/違反報告)
月海(プロフ) - ( 'ω')そうですよね...意外すぎる展開、、、最終回あとの楽しみが出来ました!!頑張ってください!待ってます (8月27日 23時) (レス) @page19 id: 25a0c09626 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉莉花 | 作成日時:2023年8月15日 23時