兄を求めて 35 ページ37
...俺は、父に愛された人だったという。
着実に物事を熟す、威厳なる人。
母は、貧民街育ちであった。
神を信じ、神に全てを捧げた人。
妹は、俺を慕っていてくれた。
兄様兄様と、可愛らしい笑顔で俺を見た人。
...だが、親同士の喧嘩は絶えなかった。
神を信じぬ父と神を祀る母は、いつもすれ違ってばかり。
些細なことから発展した父親のDVは、母親を超越、シャスにまで手を出した。
暴力や罵倒、性暴力は日常茶飯事のようであった。
...それを見て見ぬ振りをしていた俺は、父と母に離婚話を切り出した。
『離婚をすれば、お互い苦しめられることは無い』
...未だ覚えてる、自分で言った台詞。
『...神は不平等な下劣生物であり、崇めさせることで人を洗脳させる。それを、生物の最高各位と呼ぶのには不相応だ』
『...神は人を殺す。崇拝者も、非信仰者も、差別で弄び、苦しみ踠くのを、嘲笑う』
『...このような神なんぞ、いてたまるか。
だったら、ここで別れてしまえば、殺されなくて済むんだ。
だから、早くこんな生活から解き放たれてしまいたいものだ』
...ってね。
そしてその翌日、俺と父はその家を出た。
これで、暴力に見舞われる日々は終わる、って思ってた。
でもどうしても、離れる時の、シャスの悲しい顔が見過ごせなかった。
『兄様、何処へ行くの』
『兄様、帰ってこられるのですか』
...『兄様は、私たちが離れていても、覚えていてくれますか』
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作者名:扇@リョク | 作者ホームページ:uranai.nosv.org/u.php/novel/usiro_member/
作成日時:2018年6月17日 14時