【文アル】文豪のみぞ知る文豪 (ページ37)

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#３７ページ37

島崎 side

最古参で強い二人にボスは圧されていた。

彼女の友人である二人は負の感情の一切合切を詰め込んだ表情をしていて恐ろしい。

かく言う僕も、今回ばかりは腸が煮えくり返るような怒りを感じていた。きっと恐ろしいなんて人のことを言えやしないだろう。

それほどまでに僕は彼女を気に入っていた。

──場合によっては、司書さんを射ってしまうかもしれない。

何故先程の戦闘が終わった時点で帰らせなかったのか。故意だとしたら彼女を大切に思っている文豪全員が司書さんを怒るだろう。

故意でないなら何だと言うんだ、という話になるが。

ふと横を走り抜けていった人影が。前線の二人が目を丸くする。

白銀の刃は眩しくて、純潔(子供らしさ)を連想させた。

「――死んでしまえ。それが君の為になる」

いつもの喜怒哀楽、つまりは感情の込められた声とは打って変わって、驚く程無感情に紡がれたその言葉はボスに向けられたものだ。

けれど僕には、その言葉が彼女自身に向けられたものだと思えた。

何も知らないけど、ある種僕と同じ気質を持っているから。理由はそんな信用出来ないものだけど、どうにも確信してしまっている。

彼女は自らの死を望んでいるのか。

ボスが消滅し、Aがふらりと倒れた。

「A！？…意識がないな、最後の力を振り絞って、か。……織田、帰還許可は？」

「今出しました。ああ、すぐに許可おりましたわ。……A、帰るで」

「帰って、すぐに補修だね。連れて行くのは任せていい？僕司書さんと話がしたいんだ」

キラキラ周囲が光り、溶けだす。僕達が現実世界に戻っている証だ。

感情を殺しきれずに若干怒気を滲ませて二人に言えば意外なものを見るように瞠目され、それからにっこりと笑って二人に首を横に振られる。

「藤村先生だけじゃないですよ、頭にきてるのは。そのお話、ワシらも混ぜてください」

「ま、司書が全部悪いって訳じゃないからな。話を聞いて、情状酌量の余地くらいはあるだろ」

「勿論だよ。……A、もう少しの辛抱だから」

苦しそうな表情をしたAの手をぎゅっと握った。