【文アル】文豪のみぞ知る文豪 (ページ35)

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#３５ページ35

まるで私を護るみたいな戦い方をする島崎さんが不思議で仕方なかった。

私なんて護る価値もないだろうに、彼は私が敵に向かおうとすると前に出て、行く手を阻むのだ。

「ちょ、島崎さん。私も戦わないと」

「Aはいいの。ボスの攻撃を食らったら確実に……っA！」

「ん、ぐっ！」

ゾク、と悪寒が背中を走り、察知能力に従って背後を振り返り大鎌を構える。

キンッと耳を劈くような金属がぶつかる音に不快感を覚える。ボスの黒く濁った刃と私の白銀の刃は対照的で、触れ合っていたら白が黒に浸食されるような幻覚を見た。

慌てて力を込めて振り、距離を取る。ちらりと大鎌を見てみれば、変わらず白銀で、ほっと安堵の息を吐いた。

「A！下がれ！」

「…無理、ですね」

きっと跳躍して私の後ろへ回ったんだろう。志賀さんとオダサクがこちらに駆けてくるのを背に、島崎さんの攻撃の邪魔にならない程度に前に出る。

もし私がここで下がったら前線は島崎さんになってしまう。弓の、遠距離攻撃の人が刃と戦うなんて、いくら戦い慣れているといっても難しいだろう。危ないだろう。

危険な目に合うのは私だけでいい。

「A、下がって」

「島崎さんまで言いますか。ダメですよ、あなたは…う、わっ！」

悠長に仲間と話す時間なんて与えてくれないボスは無情にも私に切りかかる。今まで戦ってきたボスの中でも一番速い。なんとか大鎌で防御して、攻撃を受け止める。ビリリと痺れる手に軽く死ぬ覚悟をした。

きっと私じゃコイツに勝てない。勝てる筈がない。

とうとう相手の速さに着いていけずに太腿と脇腹に横線が入る。

「――あうっ」

「っ、A」

情けない声を出して患部を左手で抑える。と言っても小さな手では大きい傷全部を抑えられないが。

獣の爪に引き裂かれたように、間隔を置いた横線から血が垂れる。べったりと手のひらについた血に生前のいつかの日を思い出したが、痛覚にそれはどこかへ飛んで行った。

足音的にオダサクと志賀さんがボスの攻撃範囲に来るのはもうすぐだろう。島崎さんが再三下がれと言うが、もう少しだけ、ほんのちょっとで前線は私じゃなくなる。

振り上げられる敵の刃に気が付き、大鎌を構えた。しかし、脇腹の痛みで動きが鈍くなり、防御が間に合わない。

脇腹の肉を抉られる。島崎さんの矢によって深くまではやられなかったが、それでも死にそうな痛みに襲われる。

「あ、あ……」

「A？」

周囲が、暗く。