【文アル】文豪のみぞ知る文豪 (ページ33)

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#３３ページ33

霧が晴れる。左右に建物の建っている道の先には何も居らず、思わず首を傾げる。ボスは、どこなのだろうか。

「油断するなよ、どっから現れるか分からねぇからな」

「はい」

志賀さんの注意に頷き、彼等と同じように感覚を研ぎ澄まして周囲の気配を探る。……うん、全く気配を察知出来ないな。それもその筈。だって敵の強さと私の強さは天と地の差くらいあるのだから！

なんで、司書さんはここへ私を潜書させたんだろう。振り払った筈の疑問がぶり返し、大鎌を持つ手に力がこもった。

もしかしたら司書さんは、―――私を殺す気で潜書をさせたんじゃないのか。

いや、いいや、分かってる。司書さんはそんなに酷い人じゃない。でも、考えずにはいられないじゃないか、こんな状況。

いつもなら侵蝕者の攻撃による精神の侵蝕が、耗弱になる寸前になったら撤退するのに、今日はしなかった。ボスの一回の攻撃で私の精神がどれだけ削れるか、司書さんなら予測できる筈なのに。

司書さんに何かした記憶はない。ただ単純に、本来ならば文豪として扱われない筈の異分子の私が邪魔になったのか。その理由なら納得できそうだ。いつも人類は邪魔なものを淘汰していく生き物だから、仕方が無いと言えば仕方が無い。

結局普段通りの結論に行きついてしまった。ヒトだからどうなろうが仕方ない。それに、司書さんは上司なのだから。上司の命令を聞くのは普通の人には当然なんだろう？たまには普通のフリをしてもいいかもしれない。

そこまで自分の中で思って、ふと息を止める。生前無理矢理鍛えられた危機察知能力が警鐘を鳴らしているのだ。

―――……上？

素早く上を向いて、視認する。ボスが建物の屋上からこちらに飛び降りようとしていた。

ボスがトンっと屋上を蹴ったのと同時に、皆に「上！」と大声で伝え、着地する前に振り落とされるであろう敵の鉤爪みたいな刃を受け止めるために大鎌を構える。