【文アル】文豪のみぞ知る文豪 (ページ32)

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敵の攻撃が頬を掠める。垂れる血をそのままに、間合いを零距離まで詰めてその首を刎ねればあっさりと消滅していく敵の死骸を見下ろした。

「っ、はぁ、しんど……」

「A！大丈夫か！」

「志賀さん……大丈夫ですよ、まだいけます」

オダサクによれば次で最後らしい。ビリビリ痛む頬を無理矢理動かして笑みを浮かべれば、そうか、と頷いた志賀さんは私の全身を見たら流石に顔を顰めた。

「大丈夫ですから、ね、志賀さん、先に進みましょう？」

「……先に進むかどうかは司書が決める事だ」

「はぁい…」

辺りに残党が居ないか、宝石が落ちていないかを確認していたオダサクが励ますように私の肩をポンと叩く。どうせ司書さんは撤退して、私を補修室へと突っ込むんだろうなぁ。
そんな未来を想像して、溜息を吐いた。

「……は？」

「ん？どうした織田？」

「志賀先生、お司書はん、本気で言ってるんやろかこれ」

「……嘘だろ」

いつになく怒った顔で、駆け寄った志賀さんに会派隊長が持つ司書さんとの連絡用端末を見せるオダサク。端末の画面を見た途端志賀さんはザッと顔色を青くし、信じられないとでも言いたげに瞠目している。

まったく、何があったと言うのだろう。ついに島崎さんもそこに加わり、むっと不服そうな顔をした。彼にしては珍しい表情だ。

「あの、皆さん？何があったんです？」

「……A、先に進むことになった」

「……へぇ」

もしかしてと、とある憶測が脳裏をよぎるが口には出さずに返事だけをする。

「A、絶対前に出たらあかんよ。島崎先生、Aの援護に集中したって」

「……はぁい」

「うん、任せて」