【文アル】文豪のみぞ知る文豪 (ページ30)

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#３０ページ30

「――なんや、気持ち悪い所やなぁ」

べぇっと舌を出して嫌そうに顔を顰めるオダサクは「毎度の事ながら慣れへんなぁ」と付け足す。

この会派が一日に一度は必ず潜書するというこの秋声さんの『あらくれ』。私が潜書している本よりも禍々しい雰囲気のここからは是非とも早く抜け出したいものだ。

「ワシと志賀先生は前衛で敵を極力ぶっ倒して、Aは前衛を潜り抜けた敵を。島崎先生は基本的にAの援護で余裕があれば前衛もよろしゅうおたの申しますー」

「おう」

「はーい」

「うん」

三人が自分の本を武器に変える。

短剣、剣、弓。バランスはまあまあか。私じゃなくて秋声さんだったらよかったんだろうけど。

そんな事を考えながら今回の私の願いを考える。第一目標は……島崎さんに敵を寄せ付けない事、か？そうだろう、後衛死守。

島崎さんに近付く敵は全て、排除する。

「おぉ、太宰クンと似てるやん」

「大鎌か、にしても綺麗だな」

「ふぅん、今回はその形なんだ……」

私の身長程の大きさのある大鎌は柄に所々赤色の好物で装飾が施されていて、私にこんなお洒落感覚あったかなぁ、と少々首を傾げてしまう。白銀の刃は獲物を欲しているのか爛々と輝いていてどことなく物騒だ。

「足を引っ張らないように精々頑張るけど……これ、戦う時不便じゃ、うわ、無かった」

試しに一振りしてみれば重さは多少感じるものの普段と違わぬ戦い方が出来そうだった。あれぇ、もっと重いと思ってたんだけど。

因みに切れ味も抜群だった。スパンッと綺麗に両断された木の枝は呆気なく地面へと落ちる。わぁ自然破壊、駄目だよねぇいくら本の世界とは言えども。次から気を付けないと。

「ほな、行こか」

オダサクが声を掛けて歩き出す。島崎さんと横に並んで続くと、ふと島崎さんの視線が私の武器に注がれている事に気が付いた。

「……これが、何か？」

「うん、どうしてAの武器の形は変わるのかなって」

「あぁ、多分だけど、私の願いに応じて変化するんだと思うよ」

「願い？今回の願いは何？」

「えぇ…恥ずかしいから言いたくないな」

「じゃあ、どうして今回の願いで大鎌になったの？」

「流石にそれは分からないかなぁ」

じっと観察するような目だ。いつの間にか武器から私自身に移された視線は少し心地が悪い。