レイニーデイ2 【影山飛雄】

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少しのブレさえもない、美しいフォーム。
おそらく誰もが魅了されるであろう。
恋は盲目とはこのこと。
私には、"影山 飛雄"が人一倍輝いて見えた。


ボールが床に叩きつけられる音がする。
即座にホイッスルが鳴って、
試合は見事、影山君達のチームが勝った。


「あの速いやつ、凄いですね……！」
「速攻な。なんか、凄い1年来ちゃったなぁ、」



無事、今日も練習が終わって、片付けに入る。
ネットを畳んで、元にあった位置へと仕舞った。



「潮崎、携帯は持ってるよな？」
「え、あ、ハイ、」


各々の仕事を終えた部員達が、ぞろぞろと集まり始める。
菅原さんが手招きをする。


「"協力してやる"って言ったろ？」
「あ、連絡先、」
「ご名答。」
「…なんか、すみません、」
「後々必要になることだしね。」


「じゃあ、入部を歓迎すると共に、……まぁ、いろいろあったけどな、」
「大地、それはもう終わったことだべ。」
「そうだな！
まず、連絡先、交換しとこうか。」


きちんとした理論が成り立っているわけではない。
むしろ、こじつけのようにも思える。
無理矢理感が半端ない。


「はいはい、体育館出禁になりたくないなら、我慢しような、」


月島君と影山君は、明らかに嫌そうな顔をしていたけれど、
先輩に言いくるめられて、
嫌々ながら、アドレスをメモしていた。


どう動けば良いかわからなかった私に、
先輩達は、自然と集まってくれた。
全ての人の連絡先を頂く。
なんか、部活っぽい。


「Aちゃん。これ、私の連絡先。」
「あ、ありがとうございます！
えと、私の……、これです、」


いつもあまり表情の変わらない彼女の口元が、
少しだけ、緩んだ。


「ありがと。」



「潮崎さん。これ、僕のね。」
「これ、俺のやつ。」
「あ、わかった。これ、私の。」


月島君達とも交換する。
そうしていたら、日向君がやってきて、
連絡先を貰った後、
光の速さの如く、田中さんのところへと消えていった。


一気に増えたアドレス帳を見つめる。
今まで、私の携帯電話は、
最後の履歴が何ヶ月も前、というのが当たり前だった。
高校からは、そうならないといいなぁと思ってはいたが、
今だに、昼食を共にしている彼女達と、連絡を取り合ったことは一度もない。


地面に影ができる。
それはとても大きくて、
でも、待ち焦がれていたものだとは、すぐにわかった。


深呼吸して。
意を決して。
風を切って、振り向いた。


「か、影山君……！」


『潔い日』

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