レイニーデイ2 【影山飛雄】

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「えと、明日なんスけど、」


明日は日曜日。
今日は朝から部活が入っていた。
その代わり普段よりも終わる時間が早かった。
いつもは真っ暗で、ほとんど意味を成さないような蛍光灯が一つ光っているだけの道も、
今は辺りがオレンジ色に染まっている所為か、少しだけ明るい。


「何時に、待ち合わせしますか、」
「そういえば決めてなかったね。」


こくこくと頷く180超えの彼が、帰り道で横にいるのももう慣れた。
いや、確かにまだ緊張はするし、送ってもらうのが当たり前とか、
そんなことはこれっぽっちも思ってはいないけれど。


「スポーツショップ、だよね？」
「おう」
「開店何時だっけ、」
「多分、11時」


ゆっくりと私のペースで歩く彼に、少しだけ申し訳なさを感じる。
けれども、私がどう足掻こうと彼の歩くペースに敵うことはないから、
できればこのままで居て欲しい、なんて。


「じゃあ、11時に駅でいいスか、」
「うん」


平喘と話しておきながら、
明日のことで今夜は眠れそうにない。
今だって拍動が五月蝿くて、
無言になった今、自分の耳にはそれしか聞こえていない。


「お昼ご飯、どうする？」
「適当に駅前で……」
「最近たくさんお店できたらしいもんね」
「そうなのか？」
「らしいよ」


以前、友人達が駅前にスイーツショップが出来ただとか、
初上陸のレストランの看板があっただとか、
様々な情報を昼食の時に話していた。


「潮崎さんって、よく遊びに行ったりすんのか？」
「え、私？
あんまりしないかも。
高校入ってからは、影山君が初めてだと思うよ。」


テストとか部活で忙しかったもんね、
そう付け足そうと思って彼の顔を少しだけ見上げる。
そしたら、酷く驚いたような顔をして、アーモンド型の瞳が落っこちそうなくらいに見開かれていた。


「え、」
「あ、いや、意外だなーっと思って、」
「そうかなぁ」
「うス。
あ、俺も高校入ってから潮崎さんが初めて。
というか、あんまり中学の時は、」


言ってから、ハッとして苦虫を噛み殺したような顔をする。
確かに影山君って友達も少なそうだし、
まあ部活でも少々いざこざがあったわけだし、
納得できなくもないけれど。


「あ、じゃあここで」
「うす、じゃ、また明日、」


土曜日なのに、影山君に"また明日"って言うの、
なんだかいつもとは違う感じがするね。


そう言おうと思って顔を上げた先には、
何か焦ったように全速力で走り去る彼の姿しかなかった。


『アニュージュアルデイ』

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