86 ページ39
「飛雄ってさ、毎日サーブ教えてください！ってしつこくてさ！」
影山君の真似をして言う先輩は無邪気に見えた。
「不器用でさ、でもバレーに関しては何でもすぐにこなしちゃう。
本当天才ムカつくよね。」
今度はサーブを打つ手振りをしながら、私に面白おかしく語る。
「知ってた？彼奴勉強さ、面白いほどできないんだよ？」
さすがの俺もびびった、なんて笑いながら、
影山君のことについて語る。
そこには、同じ中学に通っていたはずなのに、
まるで全く知らない影山君がいた。
私の知らない影山君が、不器用に笑っているのだ。
「影山君のこと話してると、楽しそうですね。」
「え？ないない。あり得ないよ。
あ、もしかしてさ、」
"妬いた？"
歯を見せて笑って。
悪戯でも思いついたかの様に笑って。
こちらを横目で見てニヤリと笑うその姿は、
夕日と重なって眩しかった。
「俺が君の知らない飛雄のことばっかり話すから、妬いたんでしょー。」
「な、ち、違います！」
「はは、初々しいよね、本当。
わかりやすい！
相手が飛雄で命拾いしたね、」
火照る頬を抑える。
さすがは色男。
「アドバイスしてあげようか？」
前を向きながら真剣な顔で言うと、
すぐに幼い子供の様な顔をして、人差し指を立てて言った。
「最終手段は泣き落としだよね！」
何処かで烏が大きく鳴いた。
「もっと的確なアドバイスを……」
「そりゃあ無理なお願いだね。
なんてったって、あの飛雄だよ？」
スリッパを脱いで、靴に履き替える。
及川さんは指を指して駐車場を教えてくれた。
そして、リュックを渡して、にこりと笑って言った。
「次会う時は敵同士だからね」
「あ、そう…ですね、って、
今日も敵……でしたけど。」
「細かいことはいいじゃない！」
パチン、と両手を叩いて私に手を振り背を向けた。
「まあ、そんな君の思い人の飛雄にも春が来たわけだ。
泣き落とし以外で落とせたら、教えてね！」
言葉の意味を理解できないままお辞儀をした。
すみません！と頭を下げて、小走りで車内へ向かった。
窓際に座っていた彼を見る。
彼の視線が私の方に向いていないことを悲しく思いながら、
その視線の先を見据えれば、
校舎の窓から手を振る及川さんの姿があった。
疲れきった数名の部員が眠りにつく中、
バスは控えめに音を立てて発車した。
どんどんその綺麗な校舎は小さくなっていき、
曲がり角を過ぎた時、それは消えてなくなった。
『たどたどしい日』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 143人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mono(プロフ) - さくらまめさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです。できるだけ皆様に納得していただけるような、素敵な展開にしたいです！パート3でも宜しくお願いします！ (2014年11月17日 23時) (
レス) id: ae3790c4ff (このIDを非表示/違反報告)
mono(プロフ) - 湖々さん» コメントありがとうございます。長かったようで短かったです！笑 納得のいく可能な限り最大限のエンドにしていきたいです！そう言っていただけて嬉しいです。パート3でもお待ちしています！宜しくお願いします！ (2014年11月17日 23時) (レス) id: ae3790c4ff (このIDを非表示/違反報告)
mono(プロフ) - 真夜花@影山厨さん» コメントもありがとうございます！本当に素敵なイラストで、嬉しすぎでした。そう言っていただけて嬉しいです。ぎこちない2人ですが、今後とも見守っていただけると嬉しいです。パート3も宜しくお願いします！ (2014年11月17日 23時) (レス) id: ae3790c4ff (このIDを非表示/違反報告)
さくらまめ - パート２お疲れ様でした!!monoさんが書かれるもどかしい二人、いきいきしているサブキャラたちが大好きです！これからも応援しています!パート３も待ってます（*^_^*） (2014年11月17日 20時) (レス) id: 50383f2ae3 (このIDを非表示/違反報告)
湖々 - いよいよパート3ですね!!どんな風に展開するのか楽しみです。更新無理せず頑張ってくださいね、もちろんパート3も愛読させていただくと思います、笑 (2014年11月15日 8時) (レス) id: cdc5b89ea9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mono | 作成日時：2014年8月7日 21時
