レイニーデイ2 【影山飛雄】

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「ねぇ、潮崎さん！」


頬張ったサンドイッチが、喉に詰まりそうになる。
吐き出すわけにもいかないから、
味わうことなく飲み込んだ。


「な、何？」


前の席の彼女だった。
財布を握りしめて、今にも自販機に行ってきます、と言わんばかりの体勢。
昼食を共にしている子達は、
会話に耳を傾けるように静まった。


「オフの日、教えてください！」


ガバッと頭を下げる彼女に、思わず立ち上がってしまう。


「影山君、なかなか教えてくれなくて。
こうなったら潮崎さんしかいないの！
お願い！」


もうすぐ青葉城西と練習試合。
それが終わるまで、オフの日はないだろう。
おそらく、練習試合の週の日曜日。
そこがオフになるはずだ。


「それ、私も聞きたい。」


立ち上がった後ろの席の彼女。


「月島だって、バレー部でしょ？
オフの日、教えて！」


二人の友人にせがまれて、引き下がれるわけがなかった。


「多分、来週の、日曜……」
「ありがとう！」


スキップをしながら自販機へ向かう彼女を、
見えなくなるまで見つめ続けた。
その後ろ姿は本当に嬉しそうで、
女の子の私から見ても、
可愛げのある子、だった。


きっと、可愛い子、というのは、ああいうのを言うのだろう。
ああいう、一途に追いかける素直な子、というのが、
世間一般から見て、
可愛い、守ってあげたい、
そんな子なのだろう。


「A！ありがとね！」



互いの食事を終えたところで、
彼女達は今日も3組へと遊びに行こうとしていた。


「Aも行こうよー。」
「えっと。」
「たまにはいいじゃん！」


「………そうだね、私も行く。」


彼女達に背中を押されながら、教室を出た。
ふと気になって後ろを振り返り、月島君の姿を探したけれど、
生憎、その姿はなかった。
月島君に咎められる心配がなくなったせいか、
何か悪いことをしているような、引け目を隠すことに成功したせいか、
不思議と足は軽々動いた。


「あ、影山！」


ぶんぶん、と手を振る友人に、
顔を伏せていた影山君は、ゆっくりと起き上がった。
少しだけ瞬きをして、こちらを見る。
目を合わせるのが恥ずかしくて、
少しだけそっぽを向いた。
前髪で顔を隠しながら、彼の表情を確認すると、
彼はつり上がった目を、
これでもかというほど丸々と見開いていた。


彼が勢い良く立ち上がって、
つい先ほどまで腰をかけていた椅子が、
耳を塞ぎたくなるような音を立てて崩れた。


『グラスワークデイ』

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