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「おいマルコ」
「お、ローか」
「”お、ローか”じゃねぇ。白々しい」
昼休み。そろそろ記録簿を届けにローが来るだろうと思っていた矢先に来やがった。
「おう、届けに来たんだな。それ、その辺に置いて帰って良いよい」
「……」
帰ってくれて構わないのに、ローは記録簿を手にしたままズカズカと保健室に入り込んでくる。
「なんだよい。直接渡してぇってほど律儀じゃねぇだろ、お前は」
「とぼけるな」
苛立ちを含んだ低い声で呟くと、ローは鋭い目で俺を上目で睨む。
「…なんだよい」
胸ぐらを掴まれんとばかりの迫力のローに、思わずたじろぐ。俺何かしたっけ、なんて白々しい態度をとってやろうかと思ったが、更に怖いことになりそうなので辞めておく。
いや、それよりも大体怒りの矛先の目星はついているが。
「おいマルコ。一体どういう事だ」
「なにが」
「だからとぼけるな」
そう一喝したあと、ローは腹を括ったように舌打ちを漏らし、バツの悪そうな顔で続ける。
「俺がA……屋に恐れられてるとはどういう事だ」
(ほほーう)
まさかコイツ、あんな事を気にしてんのかなんて思ってしまう。
言葉の綾なんて言ったら聞こえ悪いが、何もそんな本気にする事じゃあないだろうに。
ローの弱みを握ったかもしれない優越感と、ただただこの状況を楽しんでしまうなんか楽しい気持ちで、思わず口元がにやけそうになる。
本当は大口開けて笑ってやりたいのだが、彼をますます不機嫌にする訳にもいかないため、唇を固く結んで平然を装った。
「おい、何笑ってんだ」
「断じて笑ってねぇ」
「笑ってねぇけど笑ってんだろ、てめぇ」
まさかここまでナーバスな奴だとは思わなかった。ボロが出て気まずいであろうに、わざわざ顔を険しくして威嚇だけで乗り切ろうとする彼はなんとも哀れだ。
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作者名：あまちー | 作成日時：2022年9月19日 23時
