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諸伏side
「よし!連中、だいぶ油断してるよ」
窓から身を乗り出し、したり顔でそう言う彼女。風によって彼女の柔らかい髪と服が激しく翻り、バサバサと音を立てる。
すると、突然彼女がオレの方を振り返る。
「諸伏さん。私の足掴んで支えてて」
「…え?」
間抜けな声が出た。それもそのはずだろう。突然何を言われるのかと思えば、足を掴めと言われるのだ。
「ダメだよAちゃん!女の子なんだから、誰彼構わずにそんなこと言っちゃダメ!」
「はあ?」
なんて言ってみたはいいもののAちゃんには怪訝な顔で返される。
「じゃあ班長、今すぐこっちに来て諸伏さんと変わって」
「…お前は王様かよ…」
そして、あろうことか班長にまで頼む始末だ。
「あ、ああ!大丈夫班長!オレ出来るから!」
少し必死なオレの声に、班長はわかったと返した。
「なーに考えてんのか知らないけど、私は今日ズボンだから気にする事はないよ」
残念でした、と呆れた面持ちでオレに言い、さっさとしろと行動を促す。
オレはゆっくりと彼女の太ももに方腕を回し、力を込めた。ズボン越しであるためか、温もりは感じない。むしろ、11月の肌寒い気温と同等だ。
「なにがあっても離すなよ」
彼女の言葉に深く頷いた。
「よし降谷。標準ズレるからハンドルぶらさないでくれよ」
「何故上から目線なんだ。お前は王様か?」
班長と同じようなことを言って悪態をつきながらも、ゼロはハンドルをぶらさないように手元を慎重に、そして速度を変えないように足元にも力を入れた。
Aちゃんは一度呼吸を整え、オートマチックの銃を両手で構えた。
車窓から銃を持った少女が顔を出すのは少しアレだが、人っ子一人居ない交通制限と避難指示のかかった道路だからできることなのだろう。
彼女は弾倉を込め、銃上部のスライドを引いた。
流れるような1連の動作はあまりにも自然で、何故使い方を知っているのかなんて一瞬疑問にも思わないほどだった。
そして、彼女はまた1度細い息を吐く。背中越しにも彼女の緊張が伝わる。
「…大丈夫だよ」
少しでも緊張をほぐそうと、オレは彼女の体の内部に直接響かせるように、くっついてそう言った。
だが、その行いが逆効果だったのか、背中越しの彼女の鼓動はますます大きいものになっていった。ごめん、と同じように言おうか迷ったが、怒られたくないために心の内にしまい込んだ。
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あまちー(プロフ) - いずみさん» ありがとうございます!キャラの濃い夢主ちゃん、かあいいですよね (2022年12月15日 5時) (レス) id: 49054d0acf (このIDを非表示/違反報告)
いずみ - 夢主好き (2022年11月13日 19時) (レス) id: 5bd30ec6cb (このIDを非表示/違反報告)
あまちー(プロフ) - 莉久さん» うわー😭嬉しいお言葉ありがとうございます!感情移入しにくい夢主かなって少し後悔してたんですけど、そう言っていただけると励みになります🙇♂️ご期待に添えるよう更新頑張ります💪 (2022年8月25日 16時) (レス) id: 49054d0acf (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - めっちゃくちゃ面白くて、つい一気読みしちゃいました!夢主ちゃんの性格が大好きです!この事件がどう解決されるのか、恋愛は発展するのか……楽しみです!更新頑張ってください!!! (2022年8月24日 13時) (レス) @page5 id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あまちー | 作成日時:2022年8月21日 22時