ギュッとして！

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「ただいま〜」



真奈美が私より早く中に入って、早速荷物を片付け始めている。



「ここ、私の家だよ」



「んー？いいじゃない。私たちの仲なんだし」



まあ、別にいいんだけど。



「Aってさあ、今彼氏とかいるの？」



真奈美はその類の話が好きだ。



「急だね…」



そして、いつも前ぶれなくその話題を振ってくる。



「だって気になるじゃん。もうかれこれ十年くらいいないでしょ」



「まあ、そうだけど…」



「もしかして…今もいない…？」



「うん」



「やばいよ、A。もう一週間もたてば３０でしょ？そろそろ結婚を考えたお付き合いなんかもしないと…」



私もそのことは自分が一番よーく分かっている。でもなんか、そういうのに縁がない。



「好きな人、いないの？」



好きな人…



そのとき、ふっと川西さんの顔が浮かんだ。



「いる…かも…」



「かも？」



……いや、好きだ。川西さんが好きだ。いつも私は川西さんに助けられた。



「いる」



「…A、頑張れ。これ逃したらいつまたチャンスが来るか分からないから」



「うん」



がんばろう。



「どんな人なの？」



そうだなあ…



「優しくて、面白い人」



「ふーん…会わせてよ。その人に」



「えっ、」



真奈美、和牛に会いに行くって言ってるようなものだよ。



「いや、別に会わなくてもいいでしょ」



「よくない。Aの友達として会う義務がある」



いや、義務はないでしょ。



「はい、電話」



まあ、いいかな。川西さんに会えたら喜ぶだろうし。



川西さんがいいって言ったらだけど。




『プルルルル、プルルルル♪』



『はい』



「もしもし、相楽です。今、大丈夫でしたか？」

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