チョコチップ

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(A)

朝起きて時計を見ると7時を指していた。
今日は講義、12時からだし...ゆっくりしてもいいんだけど。

身体をゆっくり起こして、冷蔵庫を覗き、冷蔵庫の横に置いた段ボールを見つめる。

実家からなぜか大量に送られてきたホットケーキミックスの袋を見て笑ってしまう。

「そんなに毎日ホットケーキ食べてたら死んじゃうよ。」

思わずそう呟いてくすくすと笑った。

結局ホットケーキにはならずに、違うお菓子に形を変えて、日本語の授業の時に持っていくのだけど。




朝ごはんを食べて、ホットケーキミックスを片手にぼんやりと考える。

よし、今日はブラウニーでも作ってみよう。

　
暇な時間にお菓子を作るのが日課になりつつある。
授業の時に持っていくと喜んでくれる、メンバーたちを見るとなんだか作り甲斐もあった。
　
チョコチップクッキーを好きだといった彼をふと思い出して、ﾌﾞﾝﾌﾞﾝと頭をふった。



焼きあがったブラウニーを詰めて、大学へ向かう。


講義室へ入れば、いつもの席にいつもの人たちが座っている。

「あ、来た来た！おーいA！」

日本から留学に来た友達や、韓国で知り合った友達や、友達には様々いるけれどみないい人だ。

「ん？なんか甘いにおいがする〜」

そういって犬のように鼻をクンクンさせる友達に思わず笑いがこぼれる。

「ブラウニー作ってきたの。みんなで食べよう？」

「わーい！やったね！」

においに誘われて人が集まって、たくさん作ったブラウニーはあっという間に売り切れ。


　
　
その日の講義を終えて家路を歩いていると、後ろから声をかけられた。

　
　
「Aさん。」

振り返ると、私とそう変わらない目線の高さで、私を見るつぶらな瞳と目があった。

　
「ウジさん...」

白くてきれいな肌が、夕焼けに反射して陶器のようにも見えた。
キャップを深くかぶってマスクをしているから、彼だと気づく人も少なそうだ。

　
「仕事帰りですか？」

そういうウジさんに、「いいえ、学校終わりです」というと、少し驚いた顔をした。

「Aさん、学生なんですね。」

「ええ。」


彼はとてもまじめだと思う。
日本語は得意ではないと言っていたけど、誰よりもまじめに取り組んでいる。

「送っていきます。」

「いえ、遠いので...」

そういうと彼は少し目を細めて

「いいから。」

と、前を歩き出した。

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