チョコチップ

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(A)


翌々日、兄に連れられたのは、私が日本にいた時、友人とよく訪れたカフェだった。

　
「...お兄ちゃん、こんなカフェ知ってるんだね。」

「彼女が、ここがいいだろうって。」

「彼女の行きつけ？」

「そうみたい。」

懐かしのカフェオレを頼んで、兄と席に着く。
彼女と趣味合うかも、なんて内心思っていた。

　
　
　
ｶﾗﾝｶﾗﾝ、と来客を知らせるベルが鳴って、兄がそちらを向いた。
なんだか、どこかで見たことのあるシルエットの女性がきょろきょろしている。

　
兄は、そっと手を振って、女性を呼んだ。

　
　
　
ハッと、息を呑んだ。

　
　
「お兄ちゃん、彼女って..」

「...黙っててごめん。」

　
兄は少し眉を下げる。

　

こちらへ向かってきた彼女は

「A！久しぶり！」

ととびきりの笑顔をくれた。

　
　
　
兄の彼女は、私の親友だった。
以前スニョンといたとき、「紹介したい人がいる」と電話をかけてきたけど、たぶん兄のことだったんだろう。

　
「まさか二人が付き合ってるなんて。」

と私が言うと、兄は少し気まずそうにした。

　
「Aが家に連れてきたとき、一目ぼれして...実はこっそり、連絡先聞いた。」


なんて、カミングアウトするものだからカフェオレを吹き出しそうになる。

　
　
兄は優しかった。
少しふざけたところもあるけど、根はいい人だ。
さみしがりで面倒くさいが、嫌いではない。
　

親友のいいところは、もちろんよく知っている。

　
隣に座りあって、独特の空気を醸し出す2人を、私はただ純粋に、きれいだと思った。

親友のことも兄のこともよく知っている。
私に見せないような顔を、お互いに見せていることも手に取るようにわかる。

　
「なんで私に紹介したかったの、2人とも。」

私が言うと、2人とも顔を見合わせた。

　
「両親に、紹介する前に、味方をつけようかなと。」

兄が言うので、思わず吹き出す。

「A、反対する？」

親友が顔色をうかがってきたので「どうして？」と返事をした。

　
「反対なんかしないよ。2人がどんな人か、私よく知ってるから。」

　
そういうと兄は、少しほっとしたように笑った。

親友は嬉しそうに笑って、コーヒーカップを口に近づけた。

　

クリーム色のカップを握る白い手に、きらりと指輪が光っていた。

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