お願い!先生! ページ7
私は基本生徒の味方。
出来る限り力になってあげたいとは思う。
でも。
「先生!先生!A先生!ソクジン先生の好きな女性のタイプ聞いてきてください!」
「可愛い生徒のお願いだと思って!ねっ!!」
流石に無理よ、これは。
これは力になれない。彼に好きなタイプを聞きに行くとか、命知らずにも程がある。
女性教員を敵に回せるほど、私には地位も権力もメンタルもない。
無理、無理、流石にこれは保身に走る。
「おい、A先生困ってるだろ。そういうのは自分でやれよ」
私の傍にいたナムジュンが、私の代わりに庇ってくれた。
彼女たちが来るつい先ほどまで、私は彼から今日の授業の質問を受けていた。
今回は私の回答に満足してくれたのか、いつもより早く切り上げらて喜んでいたというのに。
女の子達はナムジュンを見て、むっとした顔をした。
「やあねえ、ナムジュンくん。教えてくれなかったから、こうして頼んでんじゃん」
「自分だって先生にいっぱい質問してるくせに」
「ぼ、僕の質問と君たちの質問が一緒だって!?全然違うだろ!!」
ナムジュンが震え出した。
「僕の質問は先生を困らせないものだよ!君達とは違ってね!」
ふむ。それは果たしてどうかな。
「だったらナムジュンくんが聞いてきてよ!」
女の子が突然そんな極論を持ち出してきた。
「えっ!」
流石のナムジュンくんもびっくり。
「そうね!ナムジュンくん、男の子だからきっとソクジン先生も答えてくれるはず!」
「えっ、ちょっ、え」
「ねっ!お願い!哀れなクラスメートを助けるつもりだと思って!」
「それで、押しに負けたのか少年よ」
「・・・僕は、弱いですか」
「いや、君は頑張ったよ。ね、そうだろ?Aセンセ」
そう言って私を見たのは、テヒョン先生である。
ソクジンの所へ向かおうとしたらばったり会ったのだ。
「にしても最近の女子は積極的だなあ。私達も見習わないとですね!Aせんせー!」
ついでにその前にも、英語のアユン先生と遭遇している。
なんだろ、まるで桃太郎のおとぎ話のようだ。デジャビュを感じる。
だとしたら鬼は・・・キムソクジン?
「そんな嫌そうな顔するんだったら適当に答えちゃえば良かったのに」
「そうしたかったんだけど、彼女たちを誤魔化せない気がして」
「うーん。まあ、引き受けちゃった時点でもう手遅れだし、しょうがないから俺が聞いてきてあげるよ」
「・・・テヒョン先生!」
ナムジュンが神を見上げるようにテヒョンを見ると、ゆっくり手を組みだした。
彼がテヒョン教の教徒になった、決定的瞬間であった。
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作者名:卍 | 作成日時:2023年6月24日 10時