バスケ部 ページ5
仕事が終わって、私が副顧問を務めている女子バスケ部の様子を見に、体育館へ続く渡り廊下を歩いている最中だった。
前方から男子生徒の大群がやってきた。男子バスケ部の連中である。
その中に、見知った顔の生徒を見つける私。
挨拶した方が良いかな？無難にスルーしとく？と迷っていたら、向こうから声を掛けてくれた。
「先生！」
ホソクである。
隣には、夏なのにジャージを着たジョングクが立っていて、私をすっと見た。
「お疲れ様でした先生！」
「ホソクも、皆もお疲れ」
そう言えば、あざっす、と気持ちのいい挨拶が返ってきた。
これだから運動部は良い。
「どこ行くの？」
「ミーティングっす！」
「あ！先生！俺達、女バスに半面コート貸してあげましたよ！」
「ほんと？嬉しい。ありがとね」
「はい！」
なんて可愛らしい子達なんだろう。
先生じゃなくて近所のお姉さんの立場だったら、今全員の頭を撫でまわして抱きしめてた。
はあ、可愛い。はあ、愛しい。
私はそのままじゃあね、と彼らと別れた。
・・・それにしても、ミーティングかあ。
多分、夏の大会に向けての会議なんだろう。今年から男バスの顧問を務めることになったあの先生は、この地域でも有名なバスケのチームのレギュラーメンバーであるという実力者だから、今年の大会は思考が張り巡らされたおもろい試合になるんだろうなあ。
ああ、素敵。私も、会議聞いてみたいなあ。
なんてほわほわ思っていたら、突如後ろから腕を引かれた。
「・・・先生」
ジョングクの声だ。
驚いて振り返れば、やはり彼の顔がすぐそこにあった。
「わ、どうしたの？」
「夏の大会・・・、・・・先生も来ますよね？」
「え？」
突然だな。
「うん、勿論行くよ。女バスの副顧問だからね」
「ですよね・・・あの」
ジョングクが一旦言葉を止めて、何か決意したように唇を噛むと、私にさらに詰め寄った。
「メンバー発表まだですけど、僕試合出るつもりでいます」
「そうなの！すごい！頑張って！」
「あの。だから、もし女バスの試合と重なってなかったら」
「うん？」
「応援に来てくれませんか。僕の応援、先生にして欲しいんです」
んはあ！！
ふわあああーと私の頬を青春の風が吹く。
ああ、今この子アオハルしてる。そして、私、今おすそ分けもらってる。
なんて青々しくて素晴らしいんだ。
バスケ部員の生徒の下克上物語。きっとこの子はこの夏、試合での経験を通して青春していくんだ。夕方の帰り道とかで、友達と目指せ全国！とか言うんだきっと。なんて青春なの。
「行く行く、絶対行く！」
そう連呼すれば、ジョングクは嬉しそうに破顔した。
青春、最高！
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作者名：卍 | 作成日時：2023年6月24日 10時
