夏休みどこ行く?・・・学校だ! ページ4
「ねえ、夏休みどっか遊び行く?」
突如、今まで静かだった中学時代の友人たちとのグループラインに、そんな言葉が投下された。
「おおー、いいねー」
「さんせー、行きたーい」
「皆ありがと。うれしい。・・・Aはどう?」
そんな言葉でメッセージは止まっていた。
私からの返信で、このグループラインは再び起動する。
「A先生、スマホと睨めっこしてて何してるんですかー?」
英語教師のアユン先生が声を掛けてきた。
「見てもいいー?」
「いいよ」
「・・・・うわあー、これはひどい」
でしょ。と言ってため息をつけば、ぽんと背中を叩かれた。
漂う悲痛な雰囲気。
隣の席のジミン先生がちらりと私を見た。
「教員の夏休みなんてたかが知れてますよねー」
そう、結論そうなのだ。
私は、手帳を開いて自分の予定を睨みつける。
果たして、これは休みと言えるのだろうか。
「グループの友達の一人が、八月には海外研修に行っちゃうから、遊びに行けるとしたら七月なんだけど・・・」
「七月なんて、夏期講習、追試補習の監督、課題テスト・前期中間テストの制作、部活動の顧問の仕事、もろもろで多忙だもんねえ・・・・はあ」
「はあ・・・つらい」
ごめん、と打って送信。
同時に机に雪崩れるように突っ伏する。
つらい、つらいよ教員。
「大丈夫だよA先生、まだ八月がある」
「は、は、八・・・」
「てってれーん!ジン!帰還!」
キムソクジンが、授業から戻ってきたようだ。
重そうなかごをどかっと床に置いて、椅子に座る。
そして、項垂れる私とそんな私を慰めるアユンを見て首を傾げた。
「どうしたんだ?」
「ジンセンセー、夏休みの仕事量でA先生がぁーー!」
「なんだ、いつものことか。毎年、懲りないなお前」
ばっと起き上がって睨めば、ソクジンは毎年同様に満面の笑みで私に対峙してきた。
彼が笑顔の時は、私は大体彼に勝てない。
悔しい。ほんとに。
「なんで、ソクジン先生は笑顔でいられるんですか」
「教えることが趣味だから、夏期講習なんてフィーバータイムだよ。俺にとってはね」
「ふぃ・・・ばー・・・?信じられない・・・」
「Aはいつも苦しいって思いながら仕事をしているよな。一度は、楽しいって思いながら仕事をしたらどうなんだ?・・・ほら、お前国語教師が夢だったんだろ?夢の職業じゃん。ハッピー、ハッピーじゃん?」
「・・・、・・・、・・・え?洗脳?」
押し黙るソクジン。
洗脳は、失敗した。
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作者名:卍 | 作成日時:2023年6月24日 10時