ふう！！ ページ3
「先生、ここ分かりません」
「これ、どういうことですか？」
「ここはこうじゃダメなんですか？」
「いや、その理論だとおかしくないですか？」
「うん？ちょっとナニ言ってるのか分かんないですね」
「それはすなわち・・・ということですか？」
数々の記憶が私の脳天を突き上げる。
その記憶の中の私は引きつった笑みを浮かべ、冷や汗を振りまきながら、必死に彼の質問に答えていた。
回答が曖昧だと、すぐ突っ込まれる。
「だから、それってつまりどういうことなんです？」
分からない、教えられないは許されない職業。
生徒の前では、某グーグ●でいなければならない。検索したら、すぐに回答が出れるように。出れるように・・・出来たら良かったのに、いかんせん私の頭はそのように優秀に出来ていない。
ナムジュンに対峙している時は、大学時代の教授と対峙している時のようである。
あの緊張感や、一切の間違いも許されないような鋭い視線。
全てが、重なる。
ぶるぶる。
「お、おっほっほ、本当あの子の探求心には恐れ入るばかりですわー」
「彼、A先生にだけ異様に質問しますよね？私の所には、英語の質問あまり来ないですよ」
「それは彼が英語に精髄しているからでしょうね」
「ネイティブですもんね」
その後、話はまた別の新天地へと向かっていった。
取りあえず、助かった。と胸をなでおろしたその時。
「助かりましたねえ、話題が逸れて」
声を掛けられた。
私は、はあ。とため息をついてそちらを見る。
「なんですか、ジミン先生。わざわざ嫌み言いに来たんですか」
「いいえ？僕は、ここにある牛タンを取りに来ただけですよ」
けろっとした顔で私の隣にやって来たジミンは、そのまま隣の空席に腰を下ろした。
「折角だから乾杯しましょうよA先生も」
えー
「明日は休日なんですから。仕事はありますけど」
「やってらんない。飲んでやります」
「ふはっ、それでこそA先生」
そう言うと、ジミンは笑った。
「じゃ、僕が乾杯の挨拶しますね」
「はい」
「こほん、では。・・・・えー先生、毎日ナムジュンの質問対策お疲れ様です。今後、先生がスマートに質問に答えられることは祈って。かんぱーい」
「おほほほ！かんぱーい！」
くそ！スマートじゃなくて悪かったな！
私はジミンを横目で睨みつけた。
「ほら、先生。もっと食べてもっと飲んで？」
「言われなくてもそうさせていただきますよ！」
私は叫んで、その後は沢山肉を食べ酒を飲んだ。
ジミンはそんな私の横で、私に引けを取らない食べっぷりと飲みっぷりを発揮していたが、なぜだか私よりも酔っぱらってはいなかった。
この男、強い。
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作者名：卍 | 作成日時：2023年6月24日 10時
