相手にしたくない生徒の話 ページ2
一番相手にしたくない生徒は誰？
・・・という、ブラックな話が今、焼き肉店で展開されていた。
話題提供者は今を時めく、ハンサム、キムソクジン先生。
彼の頬はほんのりと熱を帯びていて、赤かった。
酔ってる。たちが悪いことに、酔っぱらってしまっている。
「うーん、俺はぁ・・・」
と、話に乗り出したのは、テヒョン先生。
馬鹿じゃないの。なんで、乗るのよこの話題に。乗るな、乗るな、降りろ。
「２組の、ジョンウくんかな」
「あー・・・あの遅刻魔の」
「毎回遅刻届の処理をするのがだるいーーかなあ。昼飯の時間は、ゆっくり食べてたいんだよ。俺」
テヒョン先生はそう言うと、疲れたようにため息をついた。
どうやら、よほどストレスだったみたい。
話に乗っかったのも、きっと、ストレス故なんだろう。
真っ当な意見に、ちょっと同意しかけてしまう。
危ない、危ない。私は火種には近づかない穏便主義なのだ。
そそそ、と壁に同化しておく。
「私は、ハユンちゃんですかねえ。身だしなみ指導がホントに・・・」
「・・・あの子何度注意しても、メイク落としてきませんもんね」
「別に私だって注意したくてしてるわけじゃないのに」
「規則だからしょうがないもんね」
こういう話題を、学生側で体験した後に、先生側でも体験出来る教師という職業の醍醐味よ。
先生になると、分かるこの規則と生徒の板挟みになる大変さ。
生徒にも理解して欲しいのだけど、難しいんだよなあこれが。
「A先生はいます？」
ソクジンが妙な気配りをしてきた。
だんまりな私に話題を振ってこの輪の中に入れようとしてくれているんだろうけれど、今はいらん。余計なお節介すぎる。
「私はいませんよ。今は」
「今は、ですか」
「おっほっほ」
笑ってやんわり流す。
「皆可愛いで大抵のことは片付きます。度を越されたら、困りますけどねー」
「そうだねえ」
テヒョン先生が突然相槌をしてきた。
「そういえば、Aセンセになついてる可愛い生徒居たよね」
「・・・エ？」
「ああ、ナムジュンだっけ」
さっきまでずっと黙っていたユンギ先生がそう言った。
うっひょーー！私は冷や汗はだらだら流れるのを感じた。
まさに、一番、今、ここで、あの話題が盛り上がっている最中で、出てほしくなかった名前の生徒であったから。
キムナムジュン。
素行良し、成績良しの模範的生徒。
一見、扱いが楽そうな先生たちにとっては天使様のような存在かと思われるが、ノンノン。
彼は、知的探求欲が強すぎるあまり、厄介な生徒だった。
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作者名：卍 | 作成日時：2023年6月24日 10時
