母(エルマ)視点 ページ22
翌日
ワトソン家の朝は早い。
日が昇る前にみんな起きて、家中の窓を開け空気の入れ替えを行う。
リリーは母屋にいる飼い猫ミミの世話をしに行き、夫は畑を耕し、母(おばあちゃん)は、家の清掃を行い、父(おじいちゃん)は水を汲みに行く。
ワトソン家の家は魔法界の都市の隣にある村に住んでいる。自然豊かで、穀物も多くとれ、住民も皆仲良しである。
エルマ(母)は台所で料理を作っている。
「エルマ、」
目にクマができてる夫(ジェームズ)がたくさんの作物を両手に台所へやってきた。
「ジェームズ、、、」
エルマは言いかけて夫の腕にある傷を見る。
「心を落ち着かせたかったんだ。もうやらないよ」
エルマは頭を振り見なかったことにする。
前のような事は起こらないんだから。
「ジェームズ、、とても心配なの、、ミアが。」
大根を手にエルマは震えた。あの恐ろしい魔界でミアは何があったのだろうと思うととても怖い。
まだ若くて元気で優しいミアが、魔法省の魔法界保安部と人間界部の両立をする事になってどれほど心配したか。
あのミアが魔法界の女神と言われどれほど嬉しかったか。
危ない仕事を何度も成功させたので、疑うこともなかった。心配しつつも疑わなかった。
今回も大丈夫だろう、と。
だから、不意打ちだった。こんなことになるなら止めればよかった。私はミアを助けに行くことができない、自分の立場が悔しかった。
自分の弱さが悔しくて辛い。
そう語ると夫は何も言わずに抱きしめてくれた。
昔からそう、いつも優しくて頼りになる。
「みんな同じだ。」
夫の手に力がこもる。
「自分よりすごい職場について危ない仕事も難なくやってたくさん稼いで、まだ自分より若いのに自分より凄くて、弱い自分がとても悔しかった。」
「ジェームズ、、、。」
「エルマ、俺は昨日のリリーを見て凄く驚いたんだ。自分より弱い立場でまだ学生で権力もないのに、自分の姉を助けに行くと決意を示したリリーにとても驚いた。」
エルマは自分の夫を見つめる。
「立場なんて関係ないんだよ。助けに行こう。いける行けないじゃない、行くか行けないか、だろ?」
ジェームズが悲しそうに笑った、エルマは過去の記憶を思い出す。
人間界へ行くと決まった時ミアが言った言葉
「行ける行けないじゃない!行くか行けないか!私は行くの!やるの!!」
必死にエルマを説得するミアの顔を思い出し笑みがこぼれる。
「そうね。」
行こう、やろう。
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作者名:ザン | 作成日時:2019年8月7日 0時