06 ページ20
「A！」
不意に名前を呼ばれた。
『た、た、た、炭治郎ッ！？』
その声の主に気づいた私は、ずざざざ、と効果音がつく勢いで後退し、私の肩を叩こうとしたのか、炭治郎が伸ばした手が宙をきる。
「？どうしたんだ？」
『・・・ご、ごめん！今すっごい緊張してて、ちょっと神経質になっていて・・！』
慌ててそう言うと、あぁ、そういうこと。と炭治郎は納得したように頷いた。
しかし、心配性でヘタレな私は、傷つけちゃったのかな、と恐る恐る炭治郎の表情を伺い、けろっとした顔をしている事を確かめるとほっ、と息を吐いた。
よし。今度こそ、万全な私で炭治郎と会話をするんだから。
「・・・まさか、Aが高跳びに出るとは思わなかったなあ。」
『・・・う、うん？』
と、思った矢先に突拍子のない事を言い出すもんだから、私は思わず三度見する。
ど、ど、どういうこと？
『・・私、練習では結構跳べてる方だと思うよ？』
「違う違う。そういうことじゃなくて。」
『そういうことじゃなくて？』
「ほら、A、小学生の頃体育の高跳びの授業でオーバージャンプして頭打った時があっただろ？あの時、俺が駆けつけるまで保健室でワンワン泣いていて・・・」
『そ、そんな事あったっけ・・・？』
「ウン。慰めるのにすごく時間がかかったし大変だったんだぞ。」
『ご、ごめんって。』
恥ずかしさで思わず俯くと、炭治郎はあははっと声をあげて笑った。クソ可愛いな。
「だから、トラウマになっているはずの高跳びに今日出るって聞いて仰天したよ。」
『怖いもの知らずで申し訳ないです。』
「確かに人を心配させる点じゃAの短所かもしれないけど、俺は怖いもの知らずのAが好きだし頼もしく思うよ。たまに背中が大きく見える。」
好き・・？一瞬フリーズする。直後、好きって言われちゃった！！とだらりと鼻の下をのばす私。情けない。でも、すごく嬉しい。心臓が早鐘のようにドクンドクンと鳴っている。あーやばい。
もうこの際炭治郎の「好き」と私の「好き」が違うことなんてどうでもよくなってくる。嬉しさでじんわりと心が満たされる現金な私。
でも、炭治郎を私の心臓をずたずたにした重罪で現行犯逮捕して、牢屋という私の懐の中におさめられたらいいのに。と思わずにはいられないんだ。
そしてもしも叶うことが許されるならば、
無期懲役で、ずっと私の傍にいてほしいな。なんてね。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
栗きんとん - この作品に出会えて良かった。タカヒロ様、尊敬しかないです。更新楽しみにしてます。 (2021年3月24日 20時) (
レス) id: e9d4725bf6 (このIDを非表示/違反報告)
ピエロ - 作者様の考え方が全ての登場人物に影響されていてみんな賢そうに見える。口勝負では負けそうですwww善逸のバレンタイン理論は共感しかないww僕も来年のバレンタイン頑張ろうと思います。 (2021年3月24日 20時) (レス) id: 0c0f9836af (このIDを非表示/違反報告)
烏 - 作者様は時透無一郎ツン理解していらっしゃる。私の大好きな時透くんがまんま再現されていて凄く嬉しいです。主人公がどうなっても自分得すぎる。むいたんもありだから笑これからも頑張ってください (2021年3月24日 20時) (レス) id: 7966fe5cdc (このIDを非表示/違反報告)
豚の鰭 - やばいとしかいえませんもっと評価されるべき作品です！こんな才能溢れる作品に出会えて凄く嬉しいです！！！更新楽しみにしてます頑張ってください！！ (2021年3月24日 20時) (レス) id: 6d88d44dde (このIDを非表示/違反報告)
タカヒロ(プロフ) - 本の虫さん» 感想読みました。とても嬉しかったです。ありがとうございます。本の虫様の作品は昨年辺りから読んでいましたが、多種多様な作品で全く被ることのないストーリー性に驚きました。本の虫様の発想力を見習いたいです。ふつつかものですがこれからもよろしくお願いします (2021年3月24日 16時) (レス) id: 0e28084fa3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：タカヒロ | 作成日時：2021年3月12日 11時
